71年以前に建った
旧々耐震物件の危険性

 耐用年数以上に気になる言葉が「旧耐震」だ。

 日本ではこれまで、大地震が起きるたびに建築基準法が見直され、耐震基準が厳しくなってきた。特に大きく変わったのが、81年の改正で、ここから後の建物を新耐震基準、前の建物を旧耐震基準と呼ぶ。さらに細かく分けて、71年改正以前ものを旧々耐震と呼ぶこともある。

 外観からは分からないが、81年以前に建った建物と、71年以前に建った建物は、重要な構造部分の建て方の基準が違うのだ。

「旧耐震は危ない」という話もよく耳にするが、どこまで本当なのだろうか。

阪神・淡路大震災時の建築年別の被害
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「旧耐震だから、大地震で全部壊れるというわけではありません。ただし阪神・淡路大震災で壊れた建物はほぼ全部旧耐震でした」

 そう語るのは、阪神・淡路大震災後に、神戸市のマンション建て替えに尽力した明治学院大学の戎正晴教授。

 中でも注目したいのが、71年以前に建てられた旧々耐震物件で、被害が格段に大きかった点だ。

 統計上、旧耐震物件は約106万戸、旧々耐震物件は約18万戸あるとされる。このうち幾つが現在、中古物件として市場に出回っているかは定かではないが、東京都心など古くからマンション開発が盛んだったエリアでは、流通数もかなり多いと見られる。

「このマンションは
  耐震改修済みですか?」

 これから中古マンションを購入する人は、まず新耐震か、旧耐震か、旧々耐震かを調べるべきだろう。新耐震と旧耐震の境目は、81年6月の建築基準法改正までに、確認申請したかどうか。境目で確認申請して、実際に建ったのは82年という建物もあるので、築年数だけで見ず、仲介業者を通じて「新耐震か、旧耐震か」とはっきり聞いた方がよい。

「明らかに旧耐震である築年数なら、耐震改修はしましたかと聞いてみるとよいでしょう。改修しているなら『しています』と答えるはずですし、『分かりません』という場合は、そもそも耐震診断自体をしていないはず」(小松教授)

 マンションの場合、住民が耐震性に不安を感じていても、まず「耐震診断するかどうか」を、管理組合の合意に基づき決めなければならない。耐震性が不足していると分かり、耐震改修が必要な場合でも、改修するには合意がいる。

 その際にネックになるのが、「耐震診断の結果、耐震性の不足が判明」したら、それを取引の際の重要事項説明で明らかにしなくてはならないことだ。

 そのため、「たぶんうちのマンションは耐震性が不足している」「耐震改修が必要といわれても、億単位の積立金がない」というマンションは、はなから諦めて耐震診断をしない傾向にある。

 そうした事情があることを、購入者もよく心得ておくべきだろう。古いマンションを買い、管理組合の一員に加わったところで、その人自身が「改修はしたくても、先立つものが……」という苦しい立場に加わる可能性もあるのだ。