車輪やモーターを滑らかに回転させるのに欠かせない軸受(ベアリング)。初代新幹線から実に50年以上にわたって高速鉄道用軸受の開発に取り組んできた日本精工は、その磨き上げた技術と高い信頼で世界の市場に挑む。

 今年3月に開業した北陸新幹線や、来年3月に新青森~新函館北斗駅間が開業予定の北海道新幹線など、ここ数年、新幹線延伸のニュースが相次いでいる。

 さらに海外でも、英国の都市間高速鉄道(IEP)の車両を日本メーカーが大量受注するなど、日本の鉄道技術の高さを印象付ける話題も増えてきた。

 こうした国内外の鉄道車両を安全かつ効率的に走らせる上で欠かせない部品、それが軸受(ベアリング)である。車輪を支えるための車軸やモーターなどの回転を滑らかにする部品だ。

matsubara「創業110年となる2026年度までに鉄道用軸受の海外売上高比率を80%まで高める」と、力強く語る 松原正英 取締役 代表執行役専務

 軸受業界で国内ナンバーワンのシェアを誇るのが日本精工である。同社はおよそ1世紀にわたり、自動車、工作機械、鉄道など、さまざまな機械の回転部分に使用される軸受の開発・製造に携わってきた。

 日本精工の売上高の約7割は自動車向け事業だが、業績を支える製品は、それだけではない。

「鉄道用軸受の市場規模を推計すると、当社の売上高は国内シェアで約50%を握っており、圧倒的なナンバーワンです」と語るのは、同社取締役 代表執行役専務で産業機械事業本部長の松原正英氏。

 中でも日本精工が得意とするのが高速鉄道用の軸受である。

 同社は1964年に開業した初代新幹線以来、実に50年以上にわたって新幹線の軸受の開発および製造をリードしてきた。

 時速200キロ超と、当時としては驚異的な高速走行を支える軸受を生み出したことは鉄道会社や車両メーカーから高く評価され、その後の新幹線車両でも継続的に受注を獲得。北陸新幹線、北海道新幹線の他、英国IEPや中国、台湾、韓国などの高速鉄道にも同社の軸受が続々と採用されている。

 50年以上にわたって新幹線の安全を支えてきた軸受への評価は海外でも高く、日本精工の鉄道用軸受の海外売上高比率は、2014年度で約50%に達する。さらに26年度までに80%まで引き上げる計画だ。

■鉄道車両の増加で軸受も成長期待
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「新興国における鉄道インフラ整備の拡大、欧州における大規模な老朽車両の置き換え需要などによって、グローバル市場が今後ますます拡大することは間違いありません。創業100周年を来期に控えた今年度は、会社全体で売上高1兆円超、営業利益1000億円超が視野に入っていますが、鉄道用軸受がさらなる成長を力強くけん引すると確信しています」(松原専務)