SNSを使わなくても炎上は起きる
問題は「どう対応するか」

 前出のとおりSNSの積極利用をためらう背景には、ネット上で批判が拡散する“炎上”への懸念がある。徳力氏は「ここに根本的な誤解がある」と強調。

「昔から経営者などが失言すると、お茶の間では炎上が起きていた。それが表に出なかっただけ。いまは怒りの声がネット上にしみ出して広がり、それがテレビで取り上げられる。ユーザーが企業と同等のメディアパワーを持つようになった」(徳力氏)

 SNSを利用するしないに関わらず、炎上に巻き込まれる時代になったのだ。そのため、欧米では、SNSを利用していれば「早期に炎上を見つけて適切な対応ができると捉えられている」(同)とも。加えてSNSには「顧客の本音が聞ける」、「商品やサービスに感動した人が強い味方になる」、「クチコミの信憑性が高いと認識されている」といった強みもある。コントロールが難しい一方、使い方次第では「効果的かつ安価にマーケティングができる」(同)のだ。

金融機関のSNS活用戦略は
「傾聴」「会話」「支援」が有効

 徳力氏はSNS活用のポイントとして「熱烈なファン(アンバサダー)による好意的なクチコミや評判が広がる『アンバサダーサイクル』を構築する必要がある」と提案。それを可能にするのが「傾聴、会話、活性化、支援、統合」という5つの戦略だ。なかでも金融機関にとって有効な戦略は、「傾聴」と「会話」だという。

まずは、ユーザーの声を聴く(=傾聴)ことから始める。「傾聴はaskではなくlisten。SNSの価値の80%はここにあると思っています」(徳力氏)
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「利用者は商品やサービスに不満があってもコールセンターに苦情を訴えるとは限らない。黙って使わなくなるものの、そのときにツイッターで愚痴を言う可能性はある。某通信会社ではツイッター上にクレームを見つけると、話しかけて解決策を提案するサポートを行っている。『傾聴』し『会話』することで、態度が軟化するばかりか、その対応に感動して熱烈なファンであるアンバサダーになることも少なくない」(同)

 その結果として好意的なクチコミが拡散すれば、評価が高まるだけでなく、従来の利用者以外の人たちにも会社名やブランド、サービスが認知されることにつながる。

SNSでファンを可視化すれば、
さらにファンが増える

 3つ目の「活性化」は、より多くの人に会社や商品、サービスを認知してもらい、アンバサダーを増やす戦略だ。

「某大手衣料品メーカーでは、ネット上でキャンペーンに申し込むと自分が何番目の参加者なのかが通知され、その番号をクリックするとウェブ上に行列の画像が表示されるしくみを作った。それが評判を呼び、クチコミで参加者が増えた」(徳力氏)

 アンバサダーを可視化することで、より影響力が高まった一例だ。と同時に、情報発信に熱心な人を“公式アンバサダー”に認定するなどの「支援」戦略も大切だという。