欧州の金融機関では
SNSをカスタマーサービスに活用
野村総合研究所リテールソリューション企画部上席コンサルタント。システムコンサルティング事業本部金融ITコンサルティング部、NRIヨーロッパ社長などを経て、2012年より現職。専門は国内外の金融サービスの調査、サービス企画
関心が高かったのは、SNSの双方性を活かしたサービスの具体例だ。五十嵐氏によれば、ヨーロッパの金融機関では、SNSを利用する若者の増加にあわせ、従来はコールセンターが担っていたカスタマーサービスをSNSで行うところが増えている。
「今の若者は電話番号ではなく、LINEのIDを交換してメッセージをやりとりする。その人たちに『コールセンターに電話して』と言っても戸惑うだけだろう。イギリスの金融機関HSBCでは、昨年からツイッターを利用したカスタマーサポートを行うなど、ソーシャルメディアを顧客とのコミュニケーションツールとして活用している」(五十嵐氏)
facebookやツイッターなどのアカウントをヘルプデスク的な位置づけで活用し、そこに寄せられた疑問や問い合わせに丁寧な回答をするとともに、やり取りを公開することで、同様の疑問を抱える人が参考にできる長所もある。
マスマーケティングの代用ではなく
アンバサダープログラムと組み合わせて考える
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ソーシャルメディアマーケティングの成果が、商品の売上げ増など目に見えるかたちで現れる小売業などと異なり、金融機関の場合、結果がすぐには見えにくい。参加者からも「アンバサダーのクチコミがビジネスにどう貢献するか」「効果をどう測定すべきか」という声が聞かれ、そこに課題を感じる会社も多い。これに対し、徳力氏は「最初から広告宣伝効果だけを期待して始めると裏切られることも多い」と釘を刺す。
「ソーシャルメディアはマスの認知ではなく、一人の気持ちが動いているかどうかを重視したほうがよい。マスの認知拡大としての効果を期待するならマスを使ったほうがいいし、従来のマスマーケティングとアンバサダープログラム的なアプローチを組み合わせて考えることが望ましい。たとえば、グループインタビューに50万円をかけてファンではないかもしれない人の意見を聞くより、facebookでファンの反応を確認したほうがヒントを得られる可能性は高い。SNSによる情報発信で電話やメールの問い合わせが減れば、サポートコスト低減につながるかもしれない」(徳力氏)
まずは、マーケティングのコストダウン手段と考えて始めるのがよさそうだ。
運営には各部署が連携する
組織的対応が不可欠
ソーシャルメディアを活用するための組織作りも気になるところだ。「関係各部署からスタッフを集めるクロスファンクショナルチームが望ましい」と徳力氏。
「日本のソーシャルメディア利用者数から考えるとフォロワー数は1~2万人程度。であれば、そんなにコストをかけるべきではない。ただし、担当者が1人だけでは負担が重いし、その人のキャラクターが全面に出てしまうと人事異動後に誰も引き継げなくなる可能性もある。複数名で兼任するとともに各部署とのコミュニケーションのチャネルを用意し、組織的な対応ができるようにすることが大切になる」(徳力氏)
炎上などの問題が起きた場合に備えて、上層部に報告するルートを確立、問題が起きた場合に即座に対応できる体勢を整えておく必要もありそうだ。