ペットは大切な家族。だから仲良く、快適に暮らしたい。そのために必要な住まいの工夫とは? ナビゲーターの金巻とも子さんと一緒に考えてみた。

犬や猫の困った行動は
ストレスがあるという訴え

金巻とも子氏&愛猫ふく
かねまき・ともこ●1998年、かねまき・こくぼ空間工房設立。一級建築士、一級愛玩動物飼養管理士(ペットケア・アドバイザー)、家庭動物住環境研究家。住宅・店舗の設計業務のほか、家庭動物との健康な暮らしをテーマにした建築コーディネーターとしてアドバイスを実施。主な著書に『犬・猫の気持ちで住まいの工夫』(彰国社)ほか。

 ペットは大切な家族。だから住まいにも彼らが喜ぶ工夫を施したいと考える人が増えている。しかし、「単に擬人化して考えたものだと危険」だと指摘するのは、一級建築士で、ペットケア・アドバイザーでもある金巻とも子氏だ。

 例えば、留守番で退屈しないように外を眺められる犬用窓を設けたとする。これが道路に向かっていると、通りすがりの人や車を不審者と見なして吠え、さらにそれで撃退したと学習してしまうと吠え癖を付けてしまう可能性もある。

 あるいは、高所に設けたキャットウォーク。片方が行き止まりになっていると転落の危険性が増え、多頭飼いの場合は、追いかけっこの末に追いつめられる状況をつくってしまいストレスのもととなる。

金巻氏宅のリビング。階段状の本棚の最上段とキャットウォークを連結し、右手には市販の、左手には造り付けのキャットタワーを設置。行き止まりをつくらない

「犬や猫は、行動パターンや常識、空間の見え方が人間とは異なります。この差異を認め、彼らの本質を尊重して住環境を整えないと、善かれと思ってした工夫で、逆にお互いが困ったことになってしまうのです」(金巻氏、以下同)

 無駄吠え、壁や家具をかじる・掘る、してはいけない所での爪とぎといった行動は、言葉を持たない犬や猫の「ストレスを抱えています」という訴えなのだと金巻氏。単に床や壁に傷防止対策を施しただけでは、いつも心に不安を抱えた状態になってしまうという。

「犬や猫だって大好きな家族を困らせようとは思っていません。人が困ることなら、ちゃんと分かるよう伝えてほしいだけなのです」