シンプルな設問が
詳細な分析に役立つ
顧客のエンゲージメント度合いを測る代表的な指標の一つに顧客満足度(CS)があるが、最大の違いは、NPSのほうが業績との相関性が強く、過去との変化も見えやすいことである。
実際、最近の研究でもNPSリーダー企業は、それ以外の企業に比べて2倍の成長を達成していることがわかった。
CSが「満足しましたか?」と過去の経験を問うのに対し、「親しい人に薦めたいですか?」と将来を問うNPSのほうが業績に直結しやすいことは、納得できるのではないだろうか。
設問がシンプルであるがゆえに調査が実施しやすく、スコアがどのように変化していくのかが見えやすい。また、拠点ごと、あるいは販売現場、コールセンターといった機能ごとの調査を行えば、満足度を下げている拠点や機能を、より詳細に特定することもできる。
システムとしてのNPSの推進
これらのメリットは、すでに欧米では十分に認知されており、1000社を超える企業が何らかの指標としてNPSを使用していると見られる。
たとえばNPSの活用によって全米一のレンタカー会社になったエンタープライズ・レンタカーは、最も成功した企業の1つといえるだろう。
同社はすべての営業所のNPSを社内公開して、互いにその向上を競わせた。ある営業所が空港送迎バスの客に無料のペットボトル水を配るサービスを開始したところ、NPSが大幅にアップし、それを見たほかの営業所も次々と真似をするようになった。このように、施策の結果がすぐに表れ、成功例を横展開できるのもNPSの大きなメリットである。
大切なのは、NPSを単なる調査に終わらせるのではなく、エンタープライズ・レンタカーのように商品やサービスの改善を促すための仕組みとして機能させることである。その意味で当社は、NPSの「S」を、「スコア」ではなく「システム」(仕組み)と言い換えることを提言している。
そして、この仕組みを回すためには、調査に協力してもらう顧客に「協力することには意味がある」と思ってもらうことが非常に重要だ。
通常NPSでは「親しい人に薦めたいですか?」という究極の質問のほかに、その理由や要望についても簡単に答えてもらうことが多い。言うまでもなく、改善策がより明確になるからだ。
寄せられた要望には、きちんと耳を傾け、なるべく迅速にアクションに結びつけることが肝心である。これを「クローズ・ザ・ループ」という。
ループが完結すれば、顧客は調査に協力することへの意味を感じるようになるし、従業員は改善の取り組みを「当たり前の日常業務」としてとらえるようになる。その相互作用によって改善の好循環が生まれるのである。
こうしたフィードバックを回す仕組みを企業文化として定着させれば、おのずとスコアとしてのNPSも上がり、企業の成長に結びついていくはずだ。
(構成・まとめ/渡辺賢一 撮影/有光浩治)