仮に、地盤カルテの総合評価が40点でも、改良工事によって80点相当の宅地にすることができる。災害リスクを知らず、対策を打たないことが問題なのだ。

 こうしたBtoBtoCの取り組みによる災害リスクの見える化は、不動産価格にも影響を与えそうだ。山本社長は「不動産価格が『土地+建物』から『地盤+土地+建物』になることが、安全な家を建て、資産を守る最大のポイント」と話す。

消費者を啓発しながら
BtoBの顧客を開拓

 億単位のお金をかけて地盤リスクの透明化を図ってきた同社だが、こうした消費者向けの各種サービス自体が、直接的な収益を生むわけではない。主要取引先はあくまで住宅メーカーなので、新たなビジネスとして2015年3月から事業者向け有料サービス「地盤安心マップPRO」の提供を開始した。従来の地盤安心マップに比べ、閲覧できる地図情報・機能が16種類から33種類に増えている。

「用地仕入れや住宅設計などにはもちろん、液状化や土砂災害などに関心が高まっているお客様への説明用資料としても利用できます」

 BtoBtoCの取り組みによって消費者の災害リスクに対する啓発を続ける一方、BtoBの新たな顧客(住宅メーカー)を創造していくというのが現時点での戦略だ。

「施主に災害リスクを把握してもらうことで、安全性の高い戸建て住宅の魅力をもっと訴求し、業界を活性化していきたい」と、山本社長は力強く語る。見据える先は地盤に留まらず、不動産業界全体の未来に及んでいる。

(取材・文/河合起季 撮影/宇佐見利明)