つまり、ネット活用は第3段階に入っているというわけだ。
たとえば、航空券の購入後も、顧客とスマートフォンを通して、空港や搭乗前、機内、現地でコミュニケーションを取り続けることが可能になっている。顧客の情報を分析したうえで、最適なタイミングでアプローチするデジタル上のコミュニケーションは大きな可能性を秘めている。
同社ではこうした環境に対応するため、2012年に主にマス広告を担当していた宣伝部と、オンラインでのチケット販売担当のWEB販売部を統合。ペイド、オウンド、アーンドのトリプルメディアを総合的に活用できる体制を整えた。さらに15年4月からは、それまで宣伝チームに入っていたSNS、メールマーケティングの機能をWEBチームに入れ、デジタル領域全体を担う「デジタルマーケティングチーム」へと改編。デジタル上でコミュニケーション戦略を考え、マーケティングの成果につなげていく新たな挑戦が始まった。
細分化したターゲットに
適切にアプローチ
具体的に、どのようなデジタルマーケティングを展開しているのか。
「より細分化したターゲットに対して、適切なタイミングでコンテンツやメッセージを提供し、クロスセル、アップセルの強化を目指していきます。旅行に行くための情報を探しているお客様がいらしたら、翌日の朝にはそれに関連した情報や商品をタイムリーにお勧めするといった感じです」
これまでは、男女、年齢といった大ざっぱな分類と、購買実績等の内容程度しかわからなかった。だが、いまはどんな商品に興味があるのか、何を調べているのかなどがネット上の行動分析で詳しく見えてくる。
ターゲティング戦略は、そうしたデータの中の「属性×行動」で導き出される。
「属性は会員としてのステータス、行動は航空券の購入者、よくサイトを見てくださる、あるいは1回も訪問されていないといった情報です。この掛け算でお客様を分類しながら、例えば当社から遠い(利用が少ない)お客様に対してはサイトを離脱した後に再訪を促す広告を配信するリターゲティングを行い、逆に近いお客様にはアプリやメールでコミュニケーションの充実を図る。そうしたアプローチができるようになっています」
さらに、一度もANAを利用したことがない非会員ユーザーに対して、鉄道利用者には「飛行機もたまにはいかがですか」、他社を利用している人には「ANAを利用してみませんか」といった広告を打つなどの手が考えられるという。