自由化先行のドイツでは
地域密着型も存在感発揮

「日本に先行して電力自由化が実施されたドイツでは、巨大電力会社への集約が進みました。1999年の自由化直後には八つの大手電力が存在していましたが、2012年には4社にまで統合されています。一方でシュタットベルケと呼ばれる地域エネルギー会社が生き残っており、小売りで50%弱、自己電源で20%弱のシェアを維持しているのも大きな特徴です」(瀧口シニアマネジャー)

 シュタットベルケとは、各地域に本拠を構え、電力のみならず、ガスや水道水などの供給、公共交通、通信といった生活インフラに関わるサービスを多方面に提供する会社だ。ドイツの法律上、拒否権を行使できる比率である25%以上の出資を自治体が行っているのが一般的だが、経営は完全に自治体から独立しており、人材も独自採用という。

「日本でも地域経済活性化、エネルギーセキュリティ向上を目的に、地域エネルギー事業を実現する動きが進んでいます。14年度に総務省が具体的な事業計画を委託・実施したところ、14の自治体が採択。15年度にも、新たに電気事業への参入を検討し始めた自治体が相次いでいます」(瀧口シニアマネジャー)

 例えば、こうした動きの先駆けとなったのが群馬県中之条町だ。13年8月には一般財団法人中之条電力を設立しており、自治体主導による新電力としては全国初となった。これを皮切りに、あちこちの自治体がすでに動き始めている。公共バス料金のセット販売など地域密着型特有のサービスを期待できそうだ。

 無論、供給型や顧客密着型の事業者の方が大きなメリットをもたらす人も少なくなく、まさに十人十色だろう。いずれにしても、私たち消費者サイドとしては魅力的な選択肢が一気に増えたことを素直に歓迎したい。