M&A等によって海外事業の拡大を図る企業は、為替リスクや進出先の規制による資金移動の制限、海外子会社の財務上の不正といったリスクにさらされている。マルチバンク・マルチERPアクセスのトレジャリーシステムの活用により、在外子会社も含めたグローバルでのグループリスク管理の高度化と迅速なリスク回避対応が可能となる。
財務情報の集約を
妨げている要因とは
副社長
事業開発・財務戦略
副島弘行
グローバル企業における財務管理では、海外子会社を含むグループ全体の資金状況、外貨で保有する現預金等の為替差損益、有価証券等の時価評価などを、トータルに、しかも瞬時に把握できる仕組みが求められている。昨今のように為替や金利、株価が急変動することの多い事業環境においてはなおさらだ。
しかし、米国に本社を置くキリバ(Kyriba)の日本法人、キリバ・ジャパンの副島弘行副社長は指摘する。「早くからグループ全体のERPを一元化してきた欧米のグローバル企業は、そのプラットフォームを使って瞬時にグローバル全体の財務情報を本社に集めることができるが、日本企業では、進出先や買収した子会社ごとに異なるシステムを使用しているところも多く、迅速な情報集約を妨げる要因の一つになっている」
ERPパッケージに含まれる財務管理システムもグループ内でばらばらなので、いま海外の子会社がいくら資金を持っているのか、そのうちドル建てや現地通貨建ての資金はいくらなのかといったことが、本社のシステムでは瞬時に把握できていないのだ。
「多額の為替差損が発生しそうな時は、速やかにヘッジ取引を行うなどの対処が必要だが、そもそも外貨建てのエクスポージャー(為替変動の影響を受ける残高)がいくらあるのかがわからなければ対処のしようがない。財務管理システムの一元化によってグループ全体の外貨保有状況を可視化することは、グローバル企業が為替リスク管理を行ううえで不可欠だ」と副島氏は語る。
可視化が求められているのは保有外貨ばかりではない。たとえば、グローバル競争を勝ち抜くにはM&Aや設備投資などの積極的な投資も必要だが、それに使える資金がグループ全体で目先いくらあるのかということも、財務管理システムがばらばらではつかめない。
「海外子会社が持つ現預金などを集めればM&Aに充てられるのに、資金の見える化ができていないために銀行からのローンに頼ってしまうこともある。グローバル資金の可視化を推進することは、リスクを抑えるだけでなく、財務コストを減らすうえでも非常に有効」(副島氏)