膨大な明細データから
不正リスクを未然に検知

 次に、もう一つの課題であるGRCについて。

「特に海外で起こる不正への懸念の声をよく聞く。たとえば、振込先情報を改ざんして自分の個人口座に送金する、あるいは単価情報を書き換えて取引先に必要以上の支払いを行い、後にキックバックを受けるなど、さまざまな手口があり、グローバル企業がすべてを人手でチェックするのは不可能」と関口氏は言う。

 これに対しても先ほどのSAP S/4HANA Financeが一つの解を提示する。SAP S/4HANA Financeのエンジンの一つである「SAP Fraud Management」がそれである。

「SAP Fraud Managementには、あらかじめ約70種類の不正パターンが登録されており、適宜追加も可能。このパターンに合致する動きがあれば、管理部門などにアラートを飛ばす。また、重要度や危険度の高いものについては、基幹システムと連携して即座に支払いをストップすることもできる」(関口氏)

 この仕組みは不正検知だけでなく、在庫回転率、債権回収率等の異常値チェックにも活用されている。たとえば、過去3年間の実績値と直近の動きを突き合わせたうえで、「乖離率が○%以上ならアラートを通知する」といった設定も可能である。

 以上、守りを固めつつ攻めの経営をサポートするSAPの経営情報基盤について見てきた。これらを導入することで、グローバル経営の質をいっそう高めることができる。環境変化の加速する時代、CEOやCFOがビジネスをリードするための武器もまた、進化を求められているのである。