グローバル競争が激しさを増す中、ガバナンスやデータ主導型の意思決定の基盤となるオペレーティングモデルを全体最適化する必要性が高まっている。欧米と比較して、日本企業において変革が進まない中で、CFOにはグループ全体を統括する立場で、俯瞰した視野から企業全体での効率化をリードする役割が求められている。

国や機能をまたがる
戦略的な経営基盤とは

Genpact Japan
代表取締役社長
杉浦英夫

「本格的なグローバル競争時代を迎える中、CFOの役割には、効率性と拡張性を兼ね備えたビジネスプロセスの設計、ガバナンスモデル、そして意思決定の基盤となる戦略的なオペレーティングモデルの推進が求められている」

 そう語るのは、ビジネスプロセス・マネジメント・サービスの大手ジェンパクトの日本法人であるジェンパクト・ジャパンの杉浦英夫・代表取締役社長だ。

 多くの日本企業がコスト構造改革によりSG&A(販売費、一般管理費)の低減に取り組んでいるが、欧米の競合相手と比較して、ROE(自己資本利益率)やROS(売上高利益率)でまだ少なからずギャップがあるのも事実である。

 杉浦氏は、「先進グローバル企業は、早くから業務改革に取り組み、シェアードサービスやアウトソーシングを活用し、国や機能をまたがる戦略的な経営基盤として、グローバル・ビジネス・サービス(GBS)(注)などの効率的かつ均一的なオペレーティングモデルをグローバル規模で構築している。日本企業では、GBSなどに横断的、継続的に責任を持つCxOや部門がなく、現行組織ごとのプロジェクトとして実施されるケースが多い。その結果、組織、機能、プロセスが個別最適のままになっていることが少なくない。グローバル競争を見据え、ビジネスプロセスの見直しとオペレーションのあり方を、ボーダレスに検討する時期に来ている」と語る。

 その方向性を示しているのが、ジェンパクト・ジャパンが2015年に国内のグローバル企業を対象に行った「グローバル間接業務に関する調査」である。「間接業務改革の目的」として、現在では「コスト削減」と「業務迅速化」が上位であったが、10年後では「ガバナンス強化」と「拡張性の高い経営基盤の強化」がそれにとって代わった(下の図表)。

(注) 優先度の高い順に、上位5項目を複数回答。1件につき、1位5点、2位4点、3位3点、4位2点、5位1点とした合計点数 Genpact Japan、東洋経済、2015年11月「グローバル間接業務改革に関する調査」 (2014年度売上高1000億円以上、グローバルに事業展開している企業対象)

 杉浦氏は、「グループが一丸となってグローバル競争を勝ち抜いていくためには、個々の事業や進出した国・地域を横断する、効率的で標準化された業務プロセスを整え、それを土台として、M&Aや新規事業の立ち上げなどがスムーズに行える拡張性の高い経営基盤をつくり上げていくことが重要。CFOは、グループ全体を統括する立場として、俯瞰した視野で、企業全体での効率化・統治力をグローバルレベルで強化し、付加価値の高い組織への変革をリードする役割も忘れないでほしい」と強調する。

注)GBS:業務機能や国・地域をまたがりグローバルで統合された業務サービス基盤として作用するモデル。