事業に深く入り込み
人事面からサポートする

 SAPの人事システムの強みはいくつかある。南氏はまず、世界中で活用する顧客企業の多さと、その中で得ている豊富なノウハウを挙げた。

 「SAPは約40年にわたって、人事関連のシステムを提供してきました。また、タレントマネジメントのソリューションで知られ、2012年に経営統合したサクセスファクターズ(SuccessFactors)には15年以上の実績があります。多くのお客様のフィードバックをもらいながら、当社の人事システムは進化してきました」

 特に人事分野では、国や地域による法制度や人事慣習のみならず、各国ごとに異なる機能が必要となる部分は必ず存在する。SAPはこうした細かなニーズに対応しながら、グローバルでの標準化を段階的に進められる仕組みを提供し、顧客基盤の厚みを増してきた。

 人事以外の情報との連携が容易な点も特徴の1つだ。たとえば、販売管理や会計など他のシステムと合わせて分析することで、組織や1人当たりの生産性を把握できる。あるいは、事業計画に応じた人員配置をより適正なものにすることができるだろう。経営に貢献する人事を実現するためにはこれは欠かせない。

 「世界中の人材が、どんな仕事をしてきたか。また、いま何をしていて、今後どうなりたいのか。過去から未来にわたる詳細な情報と、事業部門の人材ニーズ情報の両方が容易に使えなければ、適材適所は実現できません。SAPはいつでもどこからでも簡単に情報を活用できる仕組みを、クラウドサービスとして世界中で提供しています」(南氏)

 もちろん、ITを導入すればグローバル人事を実現できるというものではない。ITとセットで人事情報の活用方法も見直す必要がある。その方向性として、南氏が重視するポイントが2つある。

 「1つは、人事部が事業部に入り込み事業部トップと議論を交わしながら、人材や組織の観点で戦略的なサポートを提供すること。もう1つは、世界中の人事部門と本社人事部門との連携です。そのためには、事業部門や各国の人事部門との人事情報の共有が非常に重要になってきます」

 これらのポイントは、SAPジャパン自身が人事部門の変革の中で取り組んできたことでもある。その詳細を、次のページで説明する。