社長の「なんか臭うな…」をきっかけに
女性から集中砲火を浴びた30代男性
とはいえ、女性が指摘しないのは、きっと傷つけないための優しさだろう。実際、職場で女性社員にニオイを指摘された男性は、ショックを受け、落ち込んでしまっている。
都内で妊活応援サプリメントなどを製造・販売するゲンナイ製薬の倉田晋作さん(34歳)は、30歳を過ぎた頃から脂性が進行。倉田さん自身、脂ぎっているな、とは自分で気づいていたものの、体臭に関しては自身で感じたことはなかったという。
職場で女性に不快感を与えないため、社長(男性)とは車で移動する際など、互いにニオイチェックをすることもあった。それまでそのチェックを乗り切っていたため、「まあ大丈夫か」と考えていたとき、事件は起きた。
湿気の気になる梅雨の季節、突然社長が職場で「なんか臭うな~」と一言発し、倉田さんの元へ駆け寄って「お前からじゃないか?」と冗談っぽく伝えてきたのだ。
「またまた~」と冗談だと受け取った倉田さんだったが、社長の一言を皮切りに女性社員たちは「実は…前から少し感じていました」「生乾きのようなニオイが少し気になっています!」と集中砲火を浴びせたという。自分なりにチェックを怠っていないつもりだった倉田さんにとって、衝撃だった。
すぐに替えのTシャツを買いに走り、一応その日は乗り切ったが、その後、社長の計らいでそれまでは2台だった空気清浄機を6台買い足して計8台へ増強。また、倉田さんの誕生日には、女性社員からデオドラントシートを大量にプレゼントされ、会社が全力をあげて対策をとったそうだ。
倉田さん自身はまず、独身のためおろそかになっていた洗濯をきちんとしようと、洗浄力の高い洗濯機を購入。シャンプーやボディーソープは「最初はレジに持っていくのも恥ずかしかった」ものの、体臭対策のものに切り替えた。現在、倉田さんは結婚し、奥様からのチェックも毎日受けて、ニオイの悩みもなくなった。
一方、伝える側の女性はどんな気持ちだったのか。倉田さんの同僚である溝口佳世さんは当時をこう振り返る。
「実は倉田のニオイに関してはずっと気になっていたものの、どう伝えるのがベストなのか悩みました。当時から親しく話す仲でしたけど、やっぱり代表が口火を切ってくれて、便乗できてようやく伝えられた感じです」
倉田さん自身は「実は私も…」とカミングアウトされたり、オブラートに包まれて伝えられると、「自分のニオイ」と「気を遣わせたこと」に申し訳なさが生まれたと同時に、落ち込んだそう。ただ、今では「今日は(ニオイ)大丈夫」と言われることで、安心できるようになったという。