成約期間を短縮、
売り手は完全成功報酬制

 同社は今、通常12カ月かかるM&Aを最短3カ月(平均6・5カ月)で実現、売り手サイドには完全成功報酬制の料金体系を採用し、着手金、中間報酬、月額報酬などはかからない。それらを可能にしているのが、独自のAIやDXの活用だ。

 もともと佐上社長はIT系企業で、広告システムのアルゴリズム開発に従事していた。その技術を生かしてAIマッチングアルゴリズムや、社内業務を効率化するDXシステムを自社開発した。例えば“買い手候補検索”は、個人の経験に基づいて属人的に行われ、2~3カ月を要するのが普通だ。ところが同社では、独自のデータベースとAI技術を用いて高速で完結する。

「AIマッチングアルゴリズムのメリットは、抜け漏れがなく候補をリストアップでき、スピードによる差別化ができること。実際にマッチング結果に基づいてアプローチした結果、1時間26分でマッチング、譲渡価格6億円のM&Aがそのまま成約した例があります。さらに人間では考えられない異業種マッチングが可能になる。実際にIT企業を博物館運営企業が買収するという成約例もありました。スピードに加えて精度の高さが強みです」(佐上社長)

 DXシステムでは、従来アナログで行われていた業務のデジタル化を図り、手紙の自動発送やオリジナルの稟議システム、AIチャットボット、営業日報作成に使用するデータの統合などを実現、単純作業や事務作業にかかる時間を25%以上削減させた。午後8時以降に社内に残る社員は少ない。こうした効率化を追求することで、M&Aの成約期間の短縮や完全成功報酬制を実現、顧客のメリットを最大化しているのだ。

顧客との対話を
大切にする営業姿勢

 同社のもう一つの特徴は、顧客の気持ちに寄り添う姿勢を大切にしていること。キーエンス、大手M&A仲介会社を経て2019年に入社、現在、営業部門を統括する矢吹明大取締役は、同社の営業姿勢をこう語る。

M&A総合研究所
矢吹明大取締役

「私たちは強引な営業をしません。いわばお客さまの気持ちを考えた“引きの営業”。M&Aはあくまでも後継者不在の解決や成長戦略の一つの選択肢であり、株式譲渡契約書にはんこを押すまでは情報収集と思っていただいて構わない。何よりお客さまとの対話を大切にして、最終的に私たちの提案がベストのソリューションだと判断してもらえればいいと考えています」

 業務の効率化で生まれた時間は、顧客とのコミュニケーションに割ける。対話や提案に使える時間が増えることで、社員は余裕を持って顧客と向き合うことができる。一律的なノルマを課さないことも同社の特徴だ。