函館ご当地グルメの雄「ラッキーピエロ」。北海道新幹線開業をきっかけに函館観光の目玉として紹介された記事を目にした人も多いはずだ。同エリアに17店舗を構え、年間200万人が来店する、いまやダントツのNo.1。しかし一方で、道外はもちろんのこと、函館以外の北海道内にも店を構えない、徹底した地域主義を貫いている。大手チェーンの参入もあるなか、一体どのように地域ダントツNo.1の地位を築いたのか。そして、なぜ全国展開せず、函館にこだわるのか。

成功を勝ち得た同社の秘密を、著書『美味しい、楽しい、感動があるから、お客様が来てくれる〜ダントツ地域№1ハンバーガーチェーン・ラッキーピエロの独自化戦略』でまとめたばかりのラッキーピエロ・王一郎社長が語る。

人口減少、大手チェーン進出でも「一人勝ち」

王 一郎(おう・いちろう)
ラッキーピエログループ代表 1942年、神戸市生まれ。1987年にハンバーガーレストラン「ラッキーピエロ」を創業。「お店はお客様が喜び満足するためにありスタッフと共に栄える」をモットーに、地域密着で地産地食、環境にやさしい経営を実践している。一方で、小・中学校、高等学校、大学などで多くの講演活動を行うかたわら、B級グルメの食べ歩きという趣味を持つ。『カンブリア宮殿』『がっちりマンデー!! 』などテレビ出演多数。

 ラッキーピエロは、函館という人口27万の小さな商圏で17店舗を展開している。他店が入り込む余地はなく、大手チェーン店でさえヒトケタ台の店舗数、一人勝ちの状態だ。

「一般的には、人口減少で地方はこれからどんどん疲弊すると言われており、確かに人の数が3分の2になれば店も3分の1が要らなくなる理屈です。函館も人口は減っています。しかし観光客は減っていない。新幹線開業に過度の期待は禁物ですが、外から人を呼び込むことで、これからも成長は期待できるはずです」と王社長は語る。

 資本力にものをいわせて地域の市場占有率の向上を目指すドミナント戦略は大手チェーンの十八番だが、ラッキーピエロはそれとは真逆の戦略をとった。

「スピード優先で店舗展開する企業がかつて数多くありました。しかし、そのほとんどは淘汰されているように思います。時代が変わったいま、『成長こそ善である』という神話はもう捨てた方がいい。日本が成熟社会に移行している現在、昔のやり方は通用しません」

 では、大手とは異なるラッキーピエロの戦略とは。

「美味しいだけ」では勝てない

人気No.1メニューのチャイニーズチキンバーガー

 メインメニューである「チャイニーズチキンバーガー」は不動の第1位の人気商品だ。

「食材はとくに吟味したものを使います。“地産地消”を徹底させ、できるだけ北海道のものを使うようにしています。原価率は50%以上、これは通常あり得ません。しかもそのつくり方は、いわゆるファストフードの方法論からは逸脱していて、各店のカリナリー(台所)が食材のチルド管理の徹底から調理方法まで、レストランに負けないようにと頑張っています。それがウチの美味しさの秘密です」

 しかも、店舗によって提供するメニューは異なる。