従来、日本人は「豊かさ」のなかで環境問題を考えてきた。しかし、東日本大震災を経て、明らかに環境問題に対する姿勢に変化が生じている。電力供給不安という新しい制約の下で、エネルギー問題も、水問題も、ゴミ問題も、個別に解決を図るのではなく複合的に、しかも速やかに処理していかねばならない。そうした変化に伴い、ビジネスにおいて調和の保たれた環境システム、すなわち「循環する仕組み」をつくろうという動きが活発化してきている。具体的な循環型社会構築に必要なのは「人と人のつながり、場の形成だ」と説くのは、環境ビジネスに詳しい立教大学特任准教授の見山謙一郎氏。ネットワークを結びながら発展する環境対策「日本型モデル」へのアプローチを聞いた。

環境問題の解決に循環する自然の視点を

見山謙一郎見山謙一郎(みやま・けんいちろう)
1967年、東京都生まれ。立教大学大学院ビジネスデザイン研究科修了(MBA)。90年、住友銀行入行。2005年、三井住友銀行を退職し、Mr.Childrenの櫻井和寿らが設立したNPOバンク「ap bank」に参画。09年、フィールド・デザイン・ネットワークスを設立し、企業や金融機関に対する戦略・企画コンサルティングを開始。専門は、循環型(環境)ビジネス、ソーシャルビジネス、BOPビジネス、ファイナンス。立教大学特任准教授。中央環境審議会(循環型社会計画部会)臨時委員。多摩大学経営情報学部非常勤講師。

 環境問題とひと口にいっても、その対象は地球温暖化、大気汚染や水質汚染、生態系の破壊や天然資源の枯渇、水不足に食糧不足とじつに幅広い。この複雑で多様な問題をひとまとめにすることはほとんど不可能に思えるが、見山謙一郎氏は視点を変えてズバリ、「環境問題とは、すなわち人の問題だ」と言い切る。

「どの問題も、すべては人が引き起こしてきました。これまでは地球が黙って影響を受け止めてくれたが、それもそろそろ限界に近づいています。解決のためには、人の行動パターンや思考パターンを変えることが求められています」

 求められるのは「外部不経済の内部化」である。そもそも企業や組織が外部環境に与えている影響が不利益をもたらしているのだから、それを内部に取り込んで外には出ないようにする必要がある。そうすると循環機能が回復して、環境問題は解決に向かう(図1、2)。

図1、2

 簡単にいえば、経済活動においても「人に迷惑をかける行動はやめる」ということだ。そのために、「考え方の変革」が必要なのである。