保管・荷役を担い、需給調整機能を果たしてきた倉庫業は、物流センター化によって、さらにサプライチェーンをトータルで担う役割へと変貌を遂げてきた。リスク管理の重要性が高まるなかで、今後の「さらなる進化」を、
東京理科大学の藤川裕晃教授に聞いた。

藤川裕晃
東京理科大学
経営学部教授
ふじかわ・ひろあき。 博士(工学)、中小企業診断士、技術士(情報工学部門)。 1978年、早稲田大学大学院理工学研究科修士課程修了、 大成建設入社。2001年日本IBM入社。 07年、近畿大学工学部教授。 08年より現職。専門は工場設計、ロジスティクス、 サプライチェーン・マネジメント。 書著に『サプライチェーン・マネジメントと ロジスティクス管理入門』(日刊工業新聞社)など。

 「現在の日本の経済状況、経営環境の悪化の原因が、不況なのか、産業構造の変化なのかについては議論の余地がありますが、産業界全体がコスト削減や施設・子会社の統廃合を必要としていることは明らかです。選択と集中により、メーカーが中核事業に傾注することで、倉庫業のビジネスチャンスは大いに拡大していく可能性があります」

 サプライチェーン・マネジメントに詳しい、東京理科大学の藤川裕晃教授は、一般企業にとって経営環境が厳しさを増す今こそ、倉庫業にとっては攻めのチャンスだと指摘する。

倉庫業の枠を超えて
進む業容拡大

 これまでも倉庫業は、時代の経営環境の変化に合わせて、その役割を多様化させてきた。流通加工や輸配送業務を取り込み総合物流業へと発展させ、さらに顧客企業のロジスティクスを一括して受託する3PL(3rd Party Logistics)企業へと成長してきた。

 さらに、顧客企業のグローバル展開に伴い、特にアジアを中心とするサプライチェーン全体を受託することも多い。現地における調達物流と適地生産、国際輸送、通関業務なども、業務として取り込んでワンストップでサービスを提供している。逆に海外ベンダーの日本国内における倉庫業務を請け負うケースも増えてきている。

 近年は、ロジスティクスに限らず広範囲にわたる業務を含めてBPO(Business Process Outsourcing)を請け負うまでになっている。