デジタル技術の発展により、消費者の情報に対する接し方は大きく変わってきた。消費者にメッセージを伝え、実際の消費行動につなげていくために、企業は統合的なアプローチを行う必要に迫られている。10月27日~28日に開催された世界的なマーケティングイベント「ad:tech tokyo 2011(アドテック東京2011)」で、藤田康人・インテグレートCEOをモデレータに、ブランドマーケティングに実績を持つ日本ロレアル、メルセデス・ベンツ日本、ジョンソンのマーケティング責任者が、自社事例を通じマーケティングの将来像を語った。

■パネリスト
日本ロレアル株式会社  コンシューマー プロダクツ事業本部
メイべリンニューヨーク事業部 広報広告部マネージャー 溝渕順子氏


メルセデス・ベンツ日本株式会社 商品企画・マーケティング部 
メディア・コミュニケーション課マネージャー 禰宜田謙一氏


ジョンソン株式会社 マーケティングディレクター 大泉裕樹氏

■モデレータ
株式会社インテグレート 代表取締役CEO 藤田康人氏

デジタルメディアを使う企業
テレビCMを使う企業

株式会社インテグレート 
代表取締役CEO 藤田康人氏

藤田 マーケティングや広告の世界でも、SNS、インターネットの使い方が重要になっています。しかし、訴求対象の違いなど会社のブランドポジションによってその使い方は異なると考えます。そこで、ブランドポジションの違う企業の担当者に集まっていただき、事例を通じてこれからの方向性について議論したいと思います。

溝渕 今年の夏、15~24歳の女性をターゲットに新商品のマスカラを提供しましたが、そのマーケティング戦略はSNS、デジタル、マス広告などのメリットを最大限に発揮し、成功した事例だと思います。まず、商品のイメージキャラクターに、シンガーソングライターのAI(アイ)さんを起用。彼女のファンは8割が女性で、自分らしく生きているという生き方が、商品のイメージと重なるということでお願いしました。

 そして、「ビーアクイーンキャンペーン」というキャンペーンを実施。マス広告だけでなくデジタルを使った戦略など、あらゆるプロモーションに取り組みました。テレビ、雑誌広告のタイアップ、渋谷109などでのイベント、インターネットなどでのさまざまな取り組みです。

 雑誌とのタイアップでは、単なる商品紹介ではなく、AIさんのキャラクターを前面に出し、商品についてはインターネットへの誘導などで紹介しました。109のイベントでは、AIさんとのトークショーを開催。渋谷FMとタイアップし、ラジオの生中継で通りかかった人だけでなく、町全体から人が集まるようにしました。同時に、ツイッターでも話題づくりをしました。また、AIさんの公式ブログでも3回ほど告知してもらい、結果、AIさんのブログなどを通じて新しい顧客獲得の実現につながりました。

 ホームページでは、製品の特長だけでなく、ゲーム感覚のコンセプトなどを入れたりするなど、ユーザーが何度もアクセスしたくなるようなコンテンツを入れ込み、さらに、キャンペーンが単純な盛り上がりで終わってしまわないよう、顧客とつながっていくツールとて活用しました。顧客層もそれにフィットしたのが成功のポイントです。

大泉 当社は、カビキラー、風呂釜洗浄のジャバなどを扱っています。ほとんどの人がインターネットで商品を調べてから買いに来る人ではないので、テレビCMが一番の販売チャネルです。ドラッグストアという有力な販売チャネルもあり、テレビ広告のリマインダー的な役割を果たしています。

 われわれの販売方法はマスメディア利用が一番で、デジタルはあまり活用していません(笑)。だからと言って、これからも必要ないとは思っていません。私は、デジタルもアナログも、マスメディアもマーケティングのツールであり、最適な道具をどう使うかだと思っています。どうやって選ぶかというと、ターゲットの消費者特性、製品のカテゴリー特性、販売チャネルの特性、マーケティングの特性から判断するわけです。