激しい環境変化に対応するためにもデジタルトランスフォーメーション(DX)に取り組む企業が増えているが、「つかみどころがない」と本腰を入れられない経営者も多い。しかしDXは今後、企業の盛衰を左右するものになる。まずは経営者自らがデジタル変革へのビジョンを持つことが求められている。

「デジタルトランスフォーメーション(DX)」という言葉を耳にする機会が増えてきた。「デジタル変革」とも訳される言葉だが、企業の立場でDXを捉えるなら、取り巻く環境の変化に対応しながら、新しいデジタルテクノロジーにより、新たなビジネスモデルの創造や顧客に提供するサービス/プロダクトの価値を高め、競争優位性を確保する取り組みと考えていいだろう。その範囲は非常に広い。

 例えば、シェアリングエコノミーを生み出したUberやAirbnbのようなこれまでの業界やビジネスモデルを根本から変革する事例を位置付ける場合もあるし、製造業が生産設備や物流のデジタル化を推進して生産性を向上する取り組みもDXの一環といえる。さらに小売業が、生産者や物流と情報をリアルタイムで共有することもDXといえるだろう。

DXの足かせの一つが
経営者の無理解と未承認

 一方で、DXの実現はそれほど簡単ではない。経済産業省が2018年9月に取りまとめた「DXレポート」は、日本企業ではDXが「実現できていない」と厳しく指摘する。その大きな理由は、古い情報システムが「技術的負債」として変革の足かせとなっているためだ。既存システムが老朽化、複雑化、ブラックボックス化する中で、これを放置すれば当然DXは実現しない。しかし、思い切った刷新の重要性を情報システム部門が経営者に説明しにくく変革が進んでいないというのだ。

 そのため、17年の調査では、古い情報システムからの脱却に必要なものとして「経営者の理解と承認」が大きく増加している。これが日本の多くの企業の現状だ。