テレワークを導入したものの、難しさを実感している企業が多いこともまた事実。テレワークが定着している企業は、何が違うのだろうか。「出社は週に1回程度。これまでより仕事の効率がよくなり業務のスピードが上がった」「通勤の時間やそれに伴うストレスの軽減で、心身ともに余裕ができ、家族との時間も増えた」そう語るKDDI社員3名に、スマートワークの秘訣を聞いてみた。

 2020年4月に発出された緊急事態宣言により、多くの企業がテレワークの導入に踏み切った。しかし、宣言解除後にはテレワークをとりやめた企業も多く、2021年1月の2度目の緊急事態宣言時には「前回の宣言時ほどテレワークが行われていない可能性が高い」とも報道されている。

 さまざまな事情で、テレワークを含む本質的な働き方の改革には至らない企業が多いなか、KDDIでは2020年7月に、社員一人一人が時間や場所にとらわれず成果を出す働き方を実現することを軸とする「KDDI新働き方宣言」を策定した。社員の約9割がテレワークの活用を続けている同社で、ワークスタイルの異なる3名の社員に成功の秘訣を教えていただいた。

高橋沙織氏:官公庁営業部。官公庁を顧客として、ネットワーク回線や電話、スマートフォンなどの販売を行っている。2019年育児休業から復帰し、現在は9時から16時半の時短勤務。スマートワーク導入前はほぼ週5日出勤し、営業先との打ち合わせも現地にて対面で行っていた。

永井隆氏:事業企画部。法人事業の事業戦略の策定や実行の支援と新規事業の検討、M&Aを含むアライアンスの推進を行っている。スマートワーク導入前は週5日オフィスに出勤していた。
 

南福皇氏:事業管理部。法人セグメントおよび各営業部、地方支社の採算管理の業務を行っている。スマートワーク導入前は週5日出社して、オフィスワーク中心。デスクで社内の人々とのやりとりが多かった。

 

テレワークで“小さなイライラ”が消え
通勤減で体力的・精神的に余裕ができた

――テレワーク生活が約1年になりますが、現在の働き方や、テレワーク活用のメリットなどを教えてください。

南:出社は週に1回程度で、ほぼ自宅で業務を行っています。業務の性質上、社内会議が多く、社内の移動や会議室を探すことに毎回10分程度かかっていましたが、ほぼすべての会議がオンラインになり、その時間が削減されました。例えば1日に6回会議がある場合は、1時間ほどの時間の削減になり、本来の業務に割ける時間が増えました。

高橋:緊急事態宣言以前から時短勤務を行っていたので、週に1回程度はオンラインで社内会議に参加していましたが、自分だけだとどうしても気が引けてしまい、結局出社することもありました。今は以前とは逆に週に1〜2回、オフィスに用事があるときだけ出社して、直接お客さま先に伺っています。お客さまの了承が得られれば、オンライン会議で打ち合わせを行うこともあります。

永井:私も基本的にテレワークで、平均週1回程度の出社です。自宅の方が集中できますし、多少方法は変わった部分もありますが、仕事は問題なくできています。

 私の業務は、社内、社外とも打ち合わせが多いのですが、以前は調整することだけでも手一杯で、会議室や移動時間が取れないなど業務とは関係ない理由で打ち合わせができないこともありました。