劣化した性能・機能を分譲時の水準まで回復する大規模修繕と、陳腐化した性能・機能を現在の居住レベルに引き上げる改良工事。この二つを複合的に行う改修工事がマンション再生には不可欠だ。ところが現実的には、改修工事は遅々として進んでいない。その理由は何なのか、その壁を打ち破るにはどうしたらいいのか、対策を探ってみた。

再生に不可欠な改修工事が
進まない二つの理由

 マンションの維持・再生には、(1)長期修繕計画に基づく計画修繕と、(2)時代の要求水準に応じた性能・機能にバリューアップする改良工事が欠かせない。

 (1)の長期修繕計画に基づく計画修繕は、劣化した部材や設備の修理・更新を定期的に行い、その性能・機能を分譲時の水準程度に回復させるためのもの。特に10年以上の周期で行う大掛かりな工事が、大規模修繕だ。

 (2)のバリューアップ改良工事は、高経年マンションにつきものの、性能・機能の陳腐化に対応するもの。例えば、住戸面積の狭さや画一的な間取り、断熱性能や防犯性能の低さ、給排水システムや電気設備の古さ、高齢者対応の未整備(エレベーターがない、段差がある)など、古いマンションになればなるほど陳腐化は進んでいる。

 これらを現在の居住水準や生活水準に見合うようにバリューアップする改良工事を、(1)の大規模修繕工事と併せて行い、建物全体の性能を改善するのが改修工事。修繕と改良を別個に考えるのではなく、複合的に捉えるのがポイントで、しかも大規模修繕の実施回数を追うにつれ、改良の割合を大きくした改修工事を行うことが必要になる。図1は、この考え方を示した国交省のガイドラインである。

図1 計画修繕と改修の関連性
(出所)国土交通省「改修によるマンションの再生手法に関するマニュアル」を基に編集部作成
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