今年1月の相続税制改正や、都市部における地価の上昇とともに、相続税の課税対象者が増える見通しだ。一方、遺産分割問題をはじめとする相続関連のトラブルも年々増加している。節税やトラブル防止のためには、相続に関する正しい知識を身に付けておくことが望ましい。そこで注目されているのが「相続アドバイザー3級」という資格試験だ。「相続の基礎知識」から「相続開始後の手続き」までが体系的に学べて、実際の相続対策に非常に役立つという。

相続対策は資産保全や
人生設計とセットで考える

 今年1月の相続税制改正で相続税の課税対象者が増える見通しとなったことは、テレビや雑誌などで大きく取り上げられたのでご存じの方も多いだろう。“非課税枠”に当たる基礎控除が縮小されたことで、今までは対象外だった比較的資産の少ない家庭も、相続税を納めなければならなくなる可能性が高まったのだ。

 さらに、東京圏などの都市部では、急激な地価の上昇によって相続税の納税者や納税額が増えるとの見通しが強まっている。日本では、不動産が相続財産のかなりの割合を占める。そのため、土地が値上がりすれば、相続財産の課税評価額も上がりやすくなるからだ。

「国土交通省の2014年と15年の地価公示結果によると、東京都の住宅の公示価格は2年間で2.7%も上昇しました。特に都心の千代田区では12.3%、港区は11.9%、中央区にいたっては15.1%と急激に上昇しています。土地の相続税評価額の基準となる路線価は、おおむね公示価格の80%を目安として定められるので、公示価格が上がれば相続税の納税者や納税額も増えるのです」

峰尾茂克氏
ファイナンシャルプランナー(CFP)
THE FPコンサルティング 代表取締役

弁護士や資産税関係専門の税理士とチームを編成し、最近は主に相続に関係する相談を数多く手掛ける。TV・ラジオ出演の他、新聞・雑誌の取材協力、企業等のセミナーで活躍。共著に『マイホームで年金をつくる』(評言社)がある。

 そう語るのは、相続対策に詳しいファイナンシャルプランナーの峰尾茂克氏だ。

 アベノミクスによる地価や物価の上昇は、相続財産の価値も押し上げる。そのため「デフレ不況」だった時代よりも、なおさら相続対策が重要となるのである。

 峰尾氏は「本格的なインフレの到来に備えてか、最近は相続対策として、どのように資産を保全すればいいのかということをセットでご相談に来られる方が多くなりました」と言う。

「地価が上がれば固定資産税評価額も上昇します。このため特に都市部において駐車場にしているような土地は、固定資産税を納めるのがやっとの収入ぐらいしか得られない場所が多く、最近では等価交換等の土地の有効活用を行い、納税資金を確保しつつ、取得した建物部分を賃貸するケースも増えているようです」

 更地に賃貸物件を建てると、それだけで土地の相続税評価額は下がり、結果として相続税額の減少や安定した家賃収入も得られるという一石二鳥のメリットがある。このように、「相続対策は、資産保全や人生設計とセットで考えるのが望ましい」と峰尾氏はアドバイスする。

 ちなみに峰尾氏によると、相続税評価額を下げる方法として、最近資産価値の高い地域のタワーマンション投資が人気を集めているそうだ。

「タワーマンションは低層階よりも高層階の方が取引価格は高めですが、路線価はどの階も同じです。つまり高層階の方が、より高い資産価値を保ちながら、評価額を下げることが可能となるのです」(峰尾氏)