企業を取り巻く環境がめまぐるしく移り変わる現在、ビジネスパーソンの働くスタイルにも変革の波が押し寄せている。ダイバーシティの推進、テレワークの採用といった「新しい働き方」への適応が企業の重要なミッションとなっていくなか、オフィスに求められる役割はどのように変化しているのか。数々の先進的なオフィス環境をプロデュースしてきた企業が新たに作り上げた自社オフィスに、その問いへの答えがあった。

富士ビジネスが今年5月に本社機能を移転した東京・丸の内の新オフィス

ワークスタイルの変革がもたらした
新しいオフィスの在り方

 今年5月、様々な企業のオフィス構築を手がける専門商社として60年余りの歴史を持つ富士ビジネスは、本社機能を東京・丸の内の新オフィスに移転させた。丸ビル隣の仲通りに面した老舗ビルの250坪を全面改装したスペースは、一見すると高級ホテルのようにシックかつエレガントな雰囲気を湛えている。

 だが、その中身には同社が提案する「ワークスタイル変革」を具現化した数々の仕掛けがほどこされているという。

「ProduceM4」と名付けられたこの新オフィスには、新しいワークスタイルを実践し、価値を生み出すために必要と考えられる4つの“M”が込められている。1つは「モバイル(Mobile)」、次に「マルチジェネレーション(Multi-generation)」、そして「モチベーション(Motivation)」、それに加えて立地である「丸の内(Marunouchi)」の“M”だ。それぞれのキーワードに込めた意味について、同社の代表取締役専務である河田隆太郎氏に話を聞いた。

富士ビジネス
河田隆太郎代表取締役専務

「まず一つ目の『モバイル』は、テレワークに象徴されるICTを活用した時間や場所に囚われない新しいワークスタイルの実現性、二つ目の『マルチジェネレーション』には、様々な世代の人々が働くことで育まれる企業文化・風土が生まれる空間の必要性、三つ目の『モチベーション』は、社員一人ひとりが自ら考えて行動し、価値を創造していくことの重要性を表しています。そしてこれらを、長い歴史を持ち、日本のオフィスを象徴する場所である『丸の内』で実践し、新たな価値を創造していくという思いを込めて「ProduceM4」と名付けました」

 後述するが富士ビジネスでは、自社業務の一部にもテレワークを取り入れており、ワークスタイルの多様化に適応したオフィス提案に力を入れている。

 だが、そもそも大きな疑問がある。ICTの進化によって多様なワークスタイルが可能になるということは、時間や場所を問わずに働ける環境が今後ますます広がっていくということ。つまり、企業にとってオフィスの重要性は徐々に低下していくとも考えられるが、実際はどうなのだろうか?

「確かに『遠隔地でも働ける』というのは、働く社員にとって『多様な働き方が選択できる』ことのメリットが大きく、人材活用や優秀な人材の採用、ダイバーシティ化の推進といった部分で役割を果たしていきます。

 その一方で、社員がオフィスの外に出ていくと、便利になった部分とのトレードオフの要素が生じます。フェイス・トゥ・フェイスのコミュニケーションが減少すると、チーム力や人材育成力が弱まり、企業が積み重ねてきた文化や風土が揺らいでいくのです。多様な働き方を導入するためには、この課題をクリアする必要があります」(河田専務)

 つまり、効率のためにオフィスを離れる社員が増えると、組織としての一体感が薄れ、一つの企業文化・風土を共有できなくなる恐れがある。それは企業にとって致命的な損失になる。

 そこで必要になるのは様々な社員たちが自社の価値や目指す姿を共有することだ。

「働き方の多様化が進めば進むほど、社員の目的意識はバラバラになっていきます。そこで、社員一人ひとりが自社の企業ブランドの価値を理解し、社会の中で果たしていく役割、目標を共有することで、一つの同じ方向を目指すことができる。そのためにオフィスは極めて重要な役割を果たします。

 機能性やデザイン性の面だけでなく、"我々はこういう企業になっていくんだ!"というメッセージをオフィス環境を通じて表現することが、これからのオフィス戦略にとって必要不可欠の視点になってくるでしょう。それが新しい働き方の中で求められるオフィスの新しい存在意義でしょう。『ProduceM4』にもその機能を持たせています」(河田専務)

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