世界中では米国が断然首位で57。これに英国が34、タイが23で続く。日本はアジア2位、世界で4位の17だ(数字はすべて本稿執筆時点)。

 中国政府が世界中に作った中国語普及機関「孔子学院」の数である。本稿のためふと思い立ち、北京の同学院総本部が掲げるウェブサイトで各国別の設立実績を集計してみたところ、別表にまとめた姿が明らかになった。

中国語の普及を促したい国はどこか

孔子学院、いま世界で329拠点

 これによると、中国政府が中国語の普及に当たってどの国に投資を集中し、攻勢をかけているかが一目瞭然である。それが米国、英国であり、日本や韓国、そしてロシアやフランスなのだ。

 兄弟的仁義があったり、資源で世話になっている国であっても、貧しい国、影響力の乏しい国は、二の次、三の次になっている。このあたり、中国流というのか、目的合理的で、国家意思の所在がいっそう明快である。

 アフリカ各国がこの例に当たるし、スリランカとパキスタン、バングラデシュには2校ずつしかない。放っておいても北京を見上げてばかりの国には、あえて学校を設ける必要を感じないのか。

 とそんな物言いをすると、北京はたぶん、孔子学院を作るかどうかは「demand-pull」であって「supply-push」ではない、すなわち地元に要望がないところで学院設置を押しつけることはないのだから、そこに中国の意図を読むのは余計な詮索だと言うだろう。

 けれどもこの際「プロダクト」は中国語とその教授システム、売り手は中国政府なのであって、需要の発掘とマーケティング、ディスカウント攻勢などが必要なこと、一般商品を売る場合と本質的に同断である。

目から鱗の、多店舗展開が可能なフランチャイズ方式

 別表に現れた現実とは、中国政府の、文化外交における優先劣後順位を如実に物語るものであり続ける。

 2004年11月、韓国ソウル校を皮切りに、世界中で孔子学院を一気に増やすという北京の意向が明らかになった時、その斬新な発想が各国の自国語普及関係者に衝撃を与えた。

 英ブリティッシュ・カウンシルや米アメリカン・センターがしてきたような、場所を自ら確保し、経費を原則として全額本国予算で賄うそれ以前の常識的手法に比べると、孔子学院は出先現地にある既存の教育機関とタイアップし、場所を供出させるところに始まる。

 初期投資が少なく済み、固定費がかからない。店を用意させ、ノウハウとブランドを与えるフランチャイズ方式だから、一気の「多店舗展開」が可能だ。