外国人在留支援センターが「多文化共生」を実現する理由

新型コロナウイルス感染症の拡大は、留学生をはじめとした在留外国人や、日本での就労を希望する外国人に大きな影響を与えている。そうしたなか、今年(2020年)7月、JR四ツ谷駅前(東京都新宿区)に、外国人の出入国在留・人権・就労・労働関係の相談窓口となる「外国人在留支援センター(FRESC/フレスク)」がオープンした。これは、関連4省庁8機関〈出入国在留管理庁、東京出入国在留管理局、東京法務局人権擁護部、日本司法支援センター(法テラス)、東京労働局外国人特別相談・支援室、東京外国人雇用サービスセンター、外務省ビザ・インフォメーションおよび日本貿易振興機構(ジェトロ)〉が、ひとつ屋根の下(同建物内の同フロア)に集まったもので、多文化共生社会の実現を促進するものである。開所から約4カ月――同施設センター長の田平(たびら)浩二さん(出入国在留管理庁在留支援課長/外国人在留支援センター長)に話をうかがった。(ダイヤモンド・セレクト「オリイジン」編集部) 

*本稿は、現在発売中のインクルージョン&ダイバーシティ マガジン 「Oriijin(オリイジン)2020」からの転載記事「ダイバーシティが導く、誰もが働きやすく、誰もが活躍できる社会」に連動する、「オリイジン」オリジナル記事です。

来訪者にとって、シームレスな連携がうれしい施設

 今年2020年7月に東京・四谷に開所した外国人在留支援センター(FRESC/フレスク)は、在留外国人の出入国在留・人権・就労・労働関係の相談や手続きを、当事者である外国人やその支援者、雇用側の企業・団体から受ける行政施設だ。4省庁8機関がひとつのフロアに集まっている状況を、田平センター長はこう解説する。

「たとえば、在留資格の関係で相談に来られた外国人は、まず、東京出入国在留管理局(東京入管)の窓口で相談をするのですが、『仕事を探したい』という話になったときには、同じフロアの東京外国人雇用サービスセンター(ハローワーク)に案内できます。

 また、相談の中で、『休業手当が支払われていません』という話になったときには、東京労働局外国人特別相談・支援室の担当者に、『いま、こういう話を受けていますが、ご同席いただけませんか?』と呼びかけて、来訪者が窓口を移動しなくても話を聞くことが可能です。

 事前予約の際にあらかじめ内容がいくつかの機関に関するものであることがわかっている場合には、異なる機関の担当者が、最初から席を並べて外国人に向き合うこともあります。法律的な相談になる場合など、法テラスにも随分同席いただいています」

 フロアには視界を遮る仕切りはほとんどなく、来訪者の相談に応じる担当者が別機関の担当者の在席状況を程よく知ることができる。スムーズな窓口対応はセンターの来訪者(主に在留外国人)にとってありがたいことだ。霞が関・品川・新宿・九段…都内に散らばっていた8つの機関が同じ建物のひとつのフロアに集結したことには大きなメリットがあるようだが、開所から約4カ月あまりの現在、利用者の実態はどうか。

「相談件数は1日に100件ほどで、一人の方が複数機関を訪れることもあります。中国・韓国・フィリピン・ベトナム…など、さまざまな国の人がやって来ます。親族、知人、支援者など日本人も多いです。

 8月は、開所した7月に比べて少し落ち着いた(来訪者が減った)感じでしたが、9月はまた増えてきました。開所後まだ間もなく、前年との比較もできませんので来訪者数の推移に、新型コロナの影響がどの程度あるかというのはわかりません」

 窓口での共同対応にも表れるように、軒を同じくした4省庁8機関は、情報共有をベースにした連携を強めているという。

「まだ始まったばかりですが、運営方法を協議するため、各機関の管理職クラスが週に1度集まり、行事のお知らせ、施設見学の予定、それぞれの業務内容などを共有しています。ワンフロアで約140名が働いていますが、それぞれの機関が他の機関のさまざまな情報をあらかじめ知っておくことはとても重要です。

 そのほかにも、ある機関が開催する研修会や勉強会に声をかけあってそれぞれの業務内容などについての知識を深めたり、ある機関が主催するセミナーに他機関からの説明の機会を設けたりしていただいています。FRESC内部の連携を深めつつ、外部の方々に対して関連情報を効率的に提供することができますので、こうした取り組みはさらに進めていきたいと考えています」

外国人在留支援センター(FRESC/フレスク)
東京都新宿区四谷一丁目6番1号 四谷タワー13F
ナビダイヤル:0570-011000
(一部のIP電話及び海外からは03-5363-3013)

出入国在留管理庁(開示請求窓口)
東京出入国在留管理局(在留相談)
東京法務局人権擁護部(人権相談)
日本司法支援センター(法テラス)(「法的トラブルに関する」情報提供・法律相談)
外務省 ビザ・インフォメーション(査証相談)
東京労働局外国人特別相談・支援室(労働問題相談)
東京外国人雇用サービスセンター(就職相談)
日本貿易振興機構(ジェトロ)(高度外国人材活用相談)