米国株「30年に1度の暴落」シナリオの現実味、トランプ関税の株価下落リスクの実態Photo:Alex Wong/gettyimages

トランプ関税のコンセプト
昔の偉大な企業の復活

 経済にとっても、金融にとっても、今最大の関心事は第二次トランプ政権の関税政策である。第一次トランプ政権では、関税政策が外交のための手段として捉えていたため、経済に大きな影響を与えなかった。しかし第二次トランプ政権では、関税政策が米国内の製造と生産に重点を置くための重要な政策となっている。

 トランプ政権の関税政策のコンセプトはMAGA (Make America Great Again、アメリカを再び偉大な国にする)だ。アップルやエヌビディアなどは今も十分偉大だと思うが、トランプ大統領が思い描くイメージは違う。USスチールやGEなど、かつて米国を象徴した偉大な企業の復活だ。それを関税政策で成し遂げようとしている。

 今の偉大な企業とトランプ大統領が考える偉大な企業は何が違うのだろうか。それは、今の偉大な企業は株主と経営者を豊かにするが、必ずしも米国を豊かにしないことである。

 今の偉大な企業は、時価総額の大きな企業である。世界の時価総額トップ10社のうち8社が米国企業であり、トップ20社のうち17社が米国企業である。それでも米国の貿易赤字は極めて大きく、GDPを3%近く押し下げている。70年代前半まで貿易収支は黒字だった。