次世代DVDの規格戦争が決着した。HD DVDにこだわり続けた東芝が撤退を表明し、今後は、ソニー、松下電器産業などが推すブルーレイ・ディスク(BD)に一本化される。

 勝敗はすでに明白だった。規格を支持するハードメーカーやハリウッドの映画会社の数で、常にBD陣営が優位を保ってきたからだ。東芝の撤退による規格統一で、次世代DVDビジネスは、ようやくスタートラインに立っただけの話である。

 5年以上にわたる規格戦争に“勝利”したBD陣営だが、その前途は多難だ。

 メーカー各社は現行DVDからの置き換えを狙っているが、2007年の次世代DVDプレーヤーの市場規模は、200万台弱と見られ、1億6000万台に達するDVDプレーヤー市場のわずか1%強にすぎない。

 市場拡大のカギはむろん価格だが、ソニーや松下のBDプレーヤーは米国市場で399~499ドルと、50ドル以下で売られているDVDプレーヤーと比べてかなり高い。かつてDVDプレーヤーは、ハードが200ドルを切った途端、普及率が3割を超えた。だが現時点で、「200ドルを切るBDプレーヤーを、コスト割れせずに出せるメーカーはない」(業界関係者)。つまり、市場拡大を優先するなら、東芝がHD DVDでやったように、出血覚悟で販売を拡大するしかないのだ。

 一方で、次世代DVD市場そのものを脅かす新たなライバルも現れている。米アップルなどが進めるインターネットによる高画質の動画配信サービスだ。ネットによる音楽配信がCD市場に大打撃を与えたことは記憶に新しい。今のところ、ハリウッドの映画各社はネット配信に慎重な姿勢を崩していないが、彼らにとっては、コンテンツを売ることさえでき、著作権が担保されれば、メディアや販売チャネルはなんであろうと構わない。いずれ次世代DVDとネット配信を両天秤にかけることは間違いない。

 市場拡大を急げば収益が逼迫し、もたもたするとネット配信に市場をさらわれかねない。規格戦争の“勝者”が次世代DVDビジネスで勝者になれる保証は、どこにもない。

(『週刊ダイヤモンド』編集部 前田 剛)