有名ブランドの相次ぐ進出で注目された東京の外資系高級ホテル市場に試練が訪れている。米国の景気減速で「2007年末から外国人ビジネス需要減の兆候が出ている」(ホテル投資アドバイザー・ジョーンズ ラング ラサール ホテルズの沢柳知彦氏)のだ。海外の法人が主要顧客である外資系高級ホテルは影響をモロに受け、今年に入り月間稼働率が前年比2ケタ減になるホテルが少なくない。

 景気の影響を受けるのはホテル業界の宿命だが、受難はこれだけではない。厳しい市場環境下でさらに開業ラッシュが続くのだ。

 2009年3月にシャングリ・ラ ホテル 東京が東京駅に隣接する丸の内トラストタワー本館に開業予定。ドバイの高級ホテルチェーンであるジュメイラは東京進出に向けた交渉を詰めている。みずほ銀行大手町本部ビルの再開発では、東京建物が「東京初進出のスーパーブランドを誘致する」(同社首脳)計画。

 最高級ブランド「セント レジス」の東京進出を狙う米スターウッド・グループが交渉に残ったとうわさされたが、「欧州系を含め3~4社の候補があり、まだ決まっていない」と東京建物首脳。「賃貸借という契約形式は譲らない。そこが(運営受託契約を希望する米ホテルチェーンと)折り合わない」と顔をしかめる。

 近年の東京市場では、好立地を欲する外資系ホテル会社が、ホテル経営の損益リスクを負う賃貸借契約を受け入れるケースが増えていた。だが、米景気が冷え込み、損益リスクや、長期契約の固定家賃が貸借対照表の負債に計上されて格付けに影響するリスクを避けたいのか、東京建物の案件は「宿泊料10万円クラスのVIP需要が見込める好立地」(同社首脳)ながら、交渉が難航している。

 競合は外資だけではない。ザ・キャピトルホテル 東急やパレスホテルなど、10~11年には日本の老舗が建て替えを終える。最新設備を備えたこれらホテルよりも高い価格帯であることに対して説得力を持ち、需要を取り込んでいけるのか。外資系高級ホテルの試練は続く。

(『週刊ダイヤモンド』編集部 臼井真粧美)