世界的な景気減速のなかで、間接費をはじめとする“守りのコスト”をできる限り抑え、将来の売り上げ拡大や収益向上に貢献する分野の予算を最大化することが求められている。IT分野で言えば、保守運用コストが、まさに削減したい費用項目の1つ。第3回では、保守運用コストの削減にどう取り組むべきかを考えてみたい。
IT部門のIT化が
いちばん遅れている
ITの保守運用業務は幅広い。保守運用コストとして捉えられる項目も多岐にわたるが、「日々の保守運用業務に追われて、最適な方法が選択できているかどうか説明できないケースが多い」と、IT動向に詳しい経営コンサルティング会社アイ・ティ・アールの内山悟志・代表取締役は指摘する。
運用管理のためのソフトを導入している企業もあるが、これはシステムが稼働しているかどうかを監視するもので、IT資産や提供サービスレベル、ユーザーサポートの履歴など、ビジネスに対するITの貢献度を図るものではない。ビジネスへの貢献度がわからなければ、コストが最適かどうかも判断できない。「IT以外の業務はIT化でコスト削減が進みましたが、IT部門の業務は対象外でした。気がつけばIT部門のIT化がいちばん遅れているという状況なのです。今こそ統合的な保守運用管理の仕組みが求められています」と内山氏。
通常のシステムは、ハードウェア、ソフトウェア、ネットワークから構成され、保守運用費用が個別に発生している。ハードウェアやソフトウェアは、価格に応じて一定額の保守料が支払われ、ネットワークの利用料金も別途発生している。システムの改変や修正など、メンテナンスに伴う費用も発生する。これらはモノにかかる費用だ。
当然、人にかかるコストもある。純粋にIT部門の人件費として計上されているものもあれば、外部への委託費など経費として計上されているものもある。見逃してはならないのは、ユーザー側で発生している作業だ。ソフトウェアのバージョンアップを行なうためにユーザーが作業に費やす時間は、ITの保守運用コストである。こうした見えない部分も含めてコストを捉え、“見える化”を図る必要がある。
「ITの保守運用のコストは、守りのための定常費用です。ブラックボックス化させないためにも、ぜひ一度棚卸をしてコストの中身を明らかにすることをお勧めします」と内山氏は語る。コスト構造を明らかにして、管理手法を確立することが、適切なコスト削減につながるはずだ。
保守運用費削減に
有効なシンクライアント
ITシステムにかかる費用を個別に見ていては、保守運用のコストを削減することは難しい。そこで保守運用をトータルに把握する方法が求められる。前回紹介した仮想化技術も、それを実現する方法の1つだ。複数あるサーバやストレージを仮想化によって論理的に1つにまとめることで、保守運用をシンプルにして、コンピュータリソースを効率的に活用できる。