“黒字業界”なのになぜ…「訪問介護の倒産」が過去最多を更新した「深刻すぎるワケ」昨年の訪問介護の倒産は、過去20年で最多となる81件に急増した(写真はイメージです) Photo:PIXTA

訪問介護が苦境に喘いでいる。介護報酬のマイナス改定やヘルパー不足などで、2024年の倒産は過去最多の81件に達し、2年連続で最多を更新した。8割超が売り上げ不振で、介護報酬の落ち込みに加え、利用者の減少やヘルパー退職などが追い打ちをかけている。特に、従業員10人未満が9割を超え、小規模事業者の脱落が顕著だ。そんな中で、業歴別では半数の事業者が10年超と一定の業歴を持つ事業者であることもみえてきた。2024年の倒産と休廃業・解散は合計529件に達した。400万社の東京商工リサーチ(TSR)の企業データベースには訪問介護事業者は3万5189社登録されており、単純計算で66社に1社が昨年、市場撤退した計算になる。(東京商工リサーチ情報部 後藤賢治)

倒産件数は81件に増加
過去20年で最多に

 訪問介護事業者の倒産件数は、ヘルパー不足が深刻化してきた2016年以降、増加が顕著になってきた。景気回復に伴う人材の獲得競争などにより、2019年には58件に達した。

 コロナ禍では接触を避ける「三密」回避も広がり、甚大な影響を受けた。ただ、資金繰り支援策の効果で倒産は抑制され、2020年以降は小康状態を保ってきた。

 ところが、コロナ禍が落ち着くと支援が終了し、同時に、ガソリン代などの物価や人件費が上昇した。賃金面で劣勢に立つ訪問介護事業者は、他業界への人材流出で人手不足が加速した。さらに、2024年の介護報酬改定では、訪問介護の基本報酬がマイナスになり、経営環境の悪化で2024年の倒産は、過去20年で最多となる81件に急増した。