反撃の日本株! 新時代の最強株&投資術#15Photo:NurPhoto/gettyimages

実質値下げや販促費の大量投下など、通信業界でモバイルの契約獲得競争が激化している。通信はディフェンシブ銘柄の代表格であり、トランプ関税でリスクが高まる中、積極的に物色したいところ。しかし、足元の業績は明暗がくっきりと分かれており、慎重な銘柄選びが必要だ。特集『反撃の日本株! 新時代の最強株&投資術』の#15では、通信業界の現状を解説するとともに「買っていい銘柄」と「買ってはいけない銘柄」について明らかにしていこう。(ダイヤモンド編集部 山本 輝)

契約獲得競争激化も
ディフェンシブ銘柄としての優位性

「通信業界は、ここ数年間で最悪レベルに競争が激化している」。ゴールドマン・サックス証券の田中誓アナリストが指摘するように、通信業界で不安の種となっているのが、過熱するモバイル回線の契約獲得競争だ。

 口火を切ったのはNTTドコモだ。2024年10月にオンライン専用プラン「ahamo(アハモ)」の料金を改定し、月額2970円を据え置いたままデータ容量を月20ギガバイト(GB)から30GBに増量するなど、“実質値下げ”に踏み込んだ。この動きにすぐさま他社も追随。KDDIは11月から傘下のUQモバイルに新料金体系を導入し、月額3278円の料金を据え置いたまま月間データ容量を20GBから30GBに増量した。ソフトバンクも同様に11月からLINEMOを月額2970円のまま、20GBまでのデータ容量を30GBまで利用できるように強化した。

 もともと、モバイル市場では、第4勢力である新興の楽天モバイルが大きく契約数を伸ばしてきた。最大手として他社に顧客を取られる一方だったドコモが、“本気”で「楽天つぶし」を狙いにきたのは明らかだ。

 実質値下げだけでなく販売促進費も大きく投下するなど、通信業界全体である種の“消耗戦”が展開されている。その結果、各社の業績にも影響を及ぼしており、短期的には不透明感の強いセクターといえるのだ。

 一方で、投資対象として見れば、好材料といえる要素もある。「通信大手は国内中心で比較的業績が安定しており、景況感の悪化時にも耐性のある“ディフェンシブ銘柄”の代表格」(田中氏)だからだ。米国のトランプ関税により製造業など輸出中心の企業の業績懸念が足元で強まり、為替も円高が急速に進むいま、ある意味“危機回避的”に注目したい銘柄でもあるのだ。

 加えて、通信大手は高い収益力などを背景に株主還元に積極的で、個人投資家の間でも「高配当銘柄」として浸透している。手厚い還元姿勢は、投資判断においても大きな下支え要素だ。

 では、そうした“一長一短”があるような通信業界の中で、どの銘柄に注目すればいいのか。次ページでは、敏腕アナリストらに聞いた銘柄選定のポイントとその理由について解説する。

 ドコモを有する日本電信電話(NTT)、KDDI、ソフトバンクはどれが買いなのか。はたまた、個人投資家の関心も高く、24年12月期に5年ぶりの営業黒字を実現して話題となった楽天グループは、買いのタイミングといえるのか。その詳細を見ていこう。