第45回総選挙(8月30日投票)で、有権者が半世紀以上も続いてきた自民党の第1党体制に終止符を打ち、鳩山由紀夫氏が率いる民主党が社民、国民新両党との3党連立内閣の樹立へ向けた連立協議を本格化している。順調ならば、今月の月央にも、鳩山連立内閣が誕生する見通しだ。

 私のようなジャーナリストとしては、今回の政権交代は細川護煕内閣誕生のとき以来の本格的なものだから、本来ならば米大統領の交代の例などを見習って、ここは100日程度急かさずに、鳩山氏の政権作りの手腕を静かに見守りたいところである。

 しかし、そうとばかり言っていられないのが、生き物の経済を相手にする経済政策だ。その観点からみると、ただ今、現在も、待ったなしの状況の問題が3つ存在する。

 週初から、永田町・霞が関を取材に歩いていると、政権交代への期待と活気、不安が満ちていることを感じずにはいられない。中でも、民主党関係者の間で、最も関心の高い話題となっているのが、閣僚や党役員の人事と新政権の組織作りだ。

 「鳩山氏の側近とされる平野博文衆院議員らが官房長官とか官房副長官といったポストを独占するのではないか」とか、「いや、選挙期間中から強い意欲をみせていた管直人代表代行が官房長官ポストを射止めるに違いない」といった話題が交わされているのである。

 新旧勢力へのポストの配分にしても、「東京1区の選挙区選挙で、現職大臣の与謝野馨氏を破った海江田万里氏を始め、今回、議席の奪還を果たして、民主党躍進を演出した大物議員らの論功に手厚く報いるべきだ」との声がある一方で、むしろ、「過酷だった郵政選挙を勝ち抜き、逆風の中で、この4年間、衆議院議員として働いてきた者こそ、政権獲得の功労者である」といった議論が尽きない。鳩山氏が「人事は私一人が考えて決めること」と沈黙を守っていることから、様々な憶測が独り歩きしている感も否めない。

 また、国家戦略局や行政刷新局といった、新政権が創設を目指している政府の新組織に対する関心も非常に高い。特に、重要な政策・戦略を決める要の部署になるとされる国家戦略局については、「これまで官房長官の下にあった外政局・内政局の約70人の半分を、こちらに移すらしい」「官民の内訳はどうなるのか」など構想の細部にも大きな関心が集まっている。

 そうしたことは重要であっても、ここは、本格的な政権交代期のジャーナリズムの矜持として、批判や注文から入ることは控えて、じっくりと鳩山氏のお手並みを拝見したいと思う。