
日本人の朝のはじまりに寄り添ってきた朝ドラこと連続テレビ小説。その歴史は1961年から64年間にも及びます。毎日、15分、泣いたり笑ったり憤ったり、ドラマの登場人物のエネルギーが朝ご飯のようになる。そんな朝ドラを毎週月から金曜までチェックし、当日の感想や情報をお届けします。朝ドラに関する著書を2冊上梓し、レビューを10年続けてきた著者による「見なくてもわかる、読んだらもっとドラマが見たくなる」そんな連載です。本日は、第29回(2025年5月8日放送)の「あんぱん」レビューです。(ライター 木俣 冬)
壮行会ではじめて上座に座る豪
そっと家を出たところで…
「うち おまんさんのこと うんと好きちや」
なかなか本音を言い出せず、もどかしかった蘭子(河合優実)と豪(細田佳央太)だったが、ようやくお互いの気持ちを伝え合うことができた。
壮行会の夜、いままでずっと板間に座っていた豪が、はじめて上座に座ってもてなされる。
「勝とうが負けようが兵隊は虫けらみたいに死ぬんだよ」
屋村(阿部サダヲ)が不吉なことを言い、宴席が一時騒然となるも、朝田三姉妹(今田美桜、河合、原菜乃華)が歌うよさこい節で盛り上がる。
それを心から笑って見ていた豪は、ふと表情を変え、そっと家を出た。
気付いて追いかける蘭子。豪ちゃんは足が遅いから弾に当たらないか心配と言い「きっと戻ってきて」「きっとやのうて絶対や」と精一杯の思いを伝える。
でもここではまだ好きだとは言えない。奥ゆかしすぎる蘭子に、豪が思いきって求婚。
「戻ってきたらわしの嫁になってください」
え? と驚く蘭子の反応が素朴。しばし、逡巡していると(嬉しさと戸惑いが入り混じった表情がすばらしい)、背後でのぶ(今田美桜)が見守っている。
背中を押された蘭子は「うち おまさんのこと うんと好きちや」と伝えることができた。方言萌え。