「若手はお膳立てがないと動けない」→それ、昔のあなたも同じでしょ?人材流出職場で管理職が勘違いしていること写真はイメージです Photo:PIXTA 

人事、採用、マネジメントをはじめ、人間関係の困りごとを解決する連載第6回。「ホワイトすぎて若手がやめてしまう」という問題を前後編で考察する。後編の今回は若手の価値観や心理を踏まえたうえで、どうすれば辞めないのか、その処方箋について解説する。(人材研究所ディレクター 安藤 健、構成/ライター 奥田由意)

Z世代の若手社員は
納得コストが高い

 なぜホワイトな職場なのにやめてしまうのか。前回、その原因について、価値観が相対化しているなかで、今の若手社員はキャリア自律の意識が高いこと、実際の職場では「肩透かしリアリティショック」に遭遇することで、離職につながっているとお話しました。それではどのように若手に接していけば離職を防ぐことができるのか。今回はその処方箋について解説します。

 まず、若手社員の特徴として「納得コストが高い」ということがあります。納得コストとは、ある行動や決断を受け入れるために必要な説明や理解の質や量のことです。

 平たく言えば今の若者は「何のためにこの仕事をするのか」「これがどう自分の成長につながるのか」という説明を求める傾向が強いのです。上の世代からは「最近の若者は何にでも説明を求めて、言われたことをそのままやろうとしない」、あるいは「今の若者はすべてお膳立てしなければ動かない」という声をよく聞きます。

 若手社員の納得コストが高くなっている背景には、前回もお話した価値観の相対化があります。高度成長期の時代の社会は「価値絶対主義」的でした。会社の向かう方向が明確で、「作れば売れる時代」。個人のキャリアも見通しがつきやすく、ロールモデルも「50歳で部長になる」など種類が限られていました。極端に言えば尺度が一つしかなかったのです。

「お膳立て」については、実は上の世代もレールが敷かれていたという点は同じで、違いは「レールの数」にあります。

 ある程度価値観が固定化されたかつての社会では、人生で成功するためのレールは基本的に一本しかなく、「大企業に入社して、10年後に管理職になり、その後、30年勤め上げ、退職金をもらう」という単一のキャリアパスでした。上の世代は、言われたままそれに従っていれば、そのレールに自然と乗ることができました。