
人事、採用、マネジメントをはじめ、人間関係の困りごとを解決する連載第5回。「ホワイトすぎて若手がやめてしまう」という問題を前後編で考察する。前編の今回は若手の心理や価値観に焦点を当てて、原因を解き明かしていく。(人材研究所ディレクター 安藤 健、構成/ライター 奥田由意)
こんなにホワイトなのに
若手が辞めてしまう
企業の人事担当者から聞く声で最近増えているのが「こんなにホワイトな職場なのに、若手社員が辞めてしまう」という悩みです。驚くべきことに、残業規制が厳しく、福利厚生も充実している会社でさえ、若手の早期離職に頭を悩ませているのです。
離職のタイミングは入社後3カ月あたり(4月に入社した場合は7月)が最初のピークとなっています。これは「モチベーションのJカーブ」と呼ばれる現象で、入社直後は高かったモチベーションが急落し、その後徐々に回復していくというパターンを示しています。
かつては「五月病」と呼ばれていましたが、最近では「六月病」という言葉も出てきました。六月は唯一祝日がなく、連休後の疲れが出やすい時期であり、この頃から「退職」を考え始めるケースが増えていくのです。
なぜこんなにも早い時期に離職するのでしょうか。彼らが退職理由として挙がるのが「ホワイトすぎる」というものです。一見矛盾しているように思えますが、実はこれが現代の若手社員の心理を表しています。
これをただの若者のわがままと片付けることはできません。確かに、近年では政府主導の「働き方改革」が進み、残業時間の削減や有給休暇の取得促進など、労働環境の改善が進んでいます。実際のデータを見ても、新入社員の残業時間は年々確実に減少しています。企業側もコンプライアンスを意識し、ブラック企業と呼ばれることを恐れて労働環境の改善に取り組んでいます。
働き方改革の目論見は、過酷な労働環境の改善によって「ブラック化」を抑制し、ワークライフバランスを実現することにありました。企業にとっても従業員の定着率を上げるというWin-Winの関係を作ることでした。