
ホンダが米トランプ政権による関税措置に対応するため米国での生産を2~3年かけて9割にすると、一部の経済メディアが報じた。しかし、ホンダ幹部は「(実現は)かなり厳しい」と語り、広報部も記事内容を否定する。実は、ホンダに限らず、完成車メーカーが米国に生産移転をすると「2つの障害」が待ち受けている。特集『関税地獄 逆境の日本企業』の本稿では、ホンダ幹部、完成車メーカー関係者、トヨタ系サプライヤー首脳などの“本音”から読み解く。(ダイヤモンド編集部 山本興陽)
「本当に米国で造れるのか…」
ホンダ首脳が疑問視する理由とは
「米国の生産体制変更は、簡単ではない。本当に米国で造れるのかと同時に、カナダとメキシコの生産をどうするか考えないといけない。あの記事内容は、かなり難しい」
ホンダ幹部が強く否定するのは、日本経済新聞が4月15日に配信した『ホンダ、米国で現地生産9割に 関税で「隣国から輸出」転換』という記事についてだ。ホンダがトランプ関税に対応すべく、米国生産を増やし、2~3年かけて米国販売台数の約9割を現地生産するという内容である。
ホンダ広報部も、ダイヤモンド編集部の取材に対して、「弊社から発表した情報ではない」として記事内容を否定する。
米トランプ大統領は自動車の関税率を25%に引き上げた。状況は日々変化するものの、日系自動車メーカーが「米国への生産移転」を真剣に検討していることは間違いない。ただ、米国での現地生産はすでに進んでいる。24年度のホンダの米国販売台数は140万台程度、日本からの輸出は8000台程度で、日本からの輸出台数規模はごくわずかである。ホンダの米国販売に占める現地生産は7割程度で、残る多くはカナダやメキシコなどで生産している。
しかしながら、米国生産を9割まで高めるのは、ホンダ幹部が語るように一筋縄ではいかない。単純に製造ライン増設に時間がかかるという問題以外にも課題が山積しているからだ。
次ページ以降では、ホンダ幹部、日系完成車メーカー関係者、トヨタ系サプライヤー首脳などの“本音”を基に、完成車メーカーに待ち受ける2つの障害を明らかにする。