起業する前は「スマホで十分」と思っていても、いざビジネスを始めると、信用という点から「固定電話の番号」の必要性を痛感するようだ。しかし、小規模な企業にとって固定電話は厄介な問題で、まずオフィスに社員一人ひとりの電話を設置するのに多額の費用がかかる。そのうえ、社員の外出が多い会社だと、せっかく敷いた固定電話が有効活用できない可能性も高い。かといって固定電話に縛られて社員が自由に動けないようでは本末転倒だ。
こうした事態を解決する手立てはあるのか。総務目線で課題解決を図る「戦略総務」の提唱者、豊田健一・『月刊総務』編集長と、スマホで固定電話の番号が使える法人向け通話サービスを提供するニフティの黒田由美氏が、小規模企業の電話の活用法と働き方を考える。
固定電話の「03」番号は
会社としての信用の証
黒田 プライベートでは携帯が中心になっていても、ビジネスでは「03」で始まる固定電話の番号がないと何かと問題が生じるようですね。
豊田 そうですね。名刺に携帯番号しかないと、“根無し草”のように見られてしまい、取引を始めるときに必須の「信用」に疑問符が付いてしまいがちです。当社でも東証1部上場企業と取引していますが、最初に必ず「会社案内」を求められます。見る見ないに関わらず、かたちとして必要なんですね。それと同じで社会的信用のある「固定電話の番号」も不可欠ではないでしょうか。すでに固定電話のある企業なら、それを廃止することは容易ではないと思います。
黒田 今、デジタルネイティブといわれる20代の人たちも、起業するまでは「スマホで十分」と思っていても、いざビジネスを始めると「03」番号の必要性を痛感するそうです。
豊田 固定電話の番号がないスタートアップと新規に取引しようとしたら、上司から「この会社は本当に大丈夫なのか」と聞かれるでしょうね。これでは、せっかくいい商品やサービスを持っていても宝の持ち腐れ。スムーズに商談に持っていくためにも「03」番号は必要でしょう。
黒田 ベンチャーの多くはネット銀行を使っていますが、じつはネット銀行に法人格として申し込む際にも固定電話の番号が必要なんですね。
豊田 ネットなのに、って感じですよね!(笑) それは、普通の銀行と同じ法律が適用されているからです。
黒田 当社が提供する「ShaMo! by NIFTY BIZ」(以下、シャモ)は、「社用モバイル」の略で、スマホで固定電話の番号が使える法人向け通話サービスです。1社につき1つの代表電話番号と、社員ごとに直通電話番号が付与されます。社員個人のスマホに専用通話アプリを入れて、ログインすれば「03」などの市外局番を持った電話番号で発信・着信ができます。
豊田 なるほど。それなら、固定電話回線も工事も必要なく、「03」番号が使える。便利ですね。
黒田 初期費用は0円、月額料金は1人(1ライセンス)あたり900円から手軽に始められます。