2020年のオリンピック・パラリンピックイヤーを境に不動産価格の下落がささやかれているが、本当のところはどうなのか。不動産に詳しいプロ4人が「2017年住宅市況」を解説する。

●みずほ証券 市場情報戦略部 上席研究員 石澤卓志 氏
●不動産経済研究所 企画調査部 主任研究員 松田忠司 氏
●住宅評論家 櫻井幸雄 氏
●住宅・不動産総合研究所 吉崎誠二 氏

東京オリンピック後
価格は下がるのか?

 オリンピックイヤーの後、湾岸エリアはどうなるのか。

shiba芝浦アイランドから、晴海のオリンピック選手村や豊洲地区を望む

 晴海に造られる選手村は6000戸規模が予定されており、オリンピック終了後に3000戸が分譲、3000戸は賃貸住宅となる。

 その頃には、豊洲エリアのタワーマンション群も中古として売り出される物件が多くなり、マンション価格が急落するのではないかと心配する向きもある。

「供給過剰となって、一時価格が下がることはあるかもしれません。しかし湾岸エリアは、今後も大規模開発ができる都心に最も近い場所でもある。オリンピックに向けて交通インフラなどが整えば、価格は維持されるというより、むしろ上がる可能性が高いと考えています」(松田氏)

「選手村は中央区で、豊洲は江東区です。中央区と豊洲が同じ値で動くとは考えにくいので、両者の格差は出るでしょうね。さらに豊洲を『純豊洲』と『新豊洲辺りの周辺部』の2つに分けて考えると、純豊洲の人気は保たれるでしょう。新豊洲の方は、都心立地で最後の土地のあるところですから将来性はあると思う。

 いずれにしても、このエリアに物件がたくさん出れば、余るのではなく、商業施設やお店が増えてますます街に活気が出てくる気がします」(櫻井氏)

 オリンピック後は、不動産価格は一時的には落ちるかもしれないが、短期間で止まって横ばいになると4人中3人のプロが指摘する。

 理由は、オリンピックはもともと国の勢いや景気、不動産市況を盛り上げる効果絶大なものだから。一過性のイベントではなく、都市が継続して発展するための設備投資の期間と考えられるからだという。2021年以降は景気が落ち込むと考えている人は多いが、あまり悲観的になる必要はなさそうだ。