人手不足など数多くの課題に直面する物流。なかでも、世界有数の消費地である首都「東京」で、効率的な物流を実現することは、想像以上に難しい。50年にわたって都内で公共トラックターミナルを運営し、都市内物流の効率化に貢献してきた日本自動車ターミナル。同社が提示する新たな概念に、新時代の「大都市物流戦略」を構築するためのヒントがある――。(取材・文/「カーゴニュース」編集長 西村旦)
日本物流の心臓部
「トラックターミナル」
浜松町駅から羽田空港に向かう東京モノレール――。流通センター駅にさしかかる手前で車窓から外を見渡すと、広大な物流施設群が目にとびこんでくる。
日本自動車ターミナルが運営する公共トラックターミナルのひとつ、京浜トラックターミナルだ。
人口1300万人を超える首都「東京」。その巨大都市には昼夜を問わずさまざまな物資が行き交い、都民のくらしや経済を支えている。その膨大な物流の"大動脈"となっているのがトラック輸送であり、そのトラックが円滑な輸送を行うために不可欠な役割を果たす"心臓"ともいえるのがトラックターミナルだ。
日本自動車ターミナルは、この京浜トラックターミナルを含め都内4カ所に公共トラックターミナルを保有し、管理・運営している。総面積は約65万㎡――その規模は実に東京ドーム14個分に相当する。
各ターミナルには日本を代表する各トラック運送事業者が入居し、全国各地から日夜、長距離大型トラックで運ばれてくる貨物を受け入れ、小型トラックに積み替えて都内各地に配送する「結節点」となっている。
もし東京に、物流の"心臓""整流装置"ともいえるトラックターミナルがなかったとしたら――。都内の道路には大型トラックが溢れ、交通混雑はさらに悪化し、東京の都市機能は大幅に低下してしまうことは想像に難くない。
経済や生活の基幹インフラであり、ライフラインでもある物流。その物流を施設面から下支えてきた日本自動車ターミナルはいま、会社設立50周年を機に「第2の創業」ともいえる変革期を迎えている。
ドライバー不足に代表される物流危機が顕在化する一方で、Eコマースの急激な成長などによりサプライチェーンの構造は大きく変化し、さらに高度化されたきめ細かい物流サービスの提供が求められるようになってきている。
そうした環境変化の中で、同社は、東京23区内に広大な物流用地を抱える圧倒的な立地優位性を活かし、物流の進化や高付加価値化に対応した物流拠点として生まれ変わることで、新たなステージに立とうとしている。
トラックターミナルを超えた「トラックターミナル」へ――。その「次なる50年」を見据えた新たな事業戦略の核となるのが、『メトロポリタン・ロジスティクス』という新たな大都市物流の概念だ。