変革する物流に対応した
施設高度化へ
設立以来、一貫して物流合理化や交通円滑化に貢献してきた日本自動車ターミナルだが、その一方で、施設を使用するトラック運送事業者のビジネスモデルはこの間、徐々に変化してきた。
以前のトラックターミナルは、結節点として貨物の積み替え、中継機能を果たすだけだったが、物流ニーズの高度化・総合化が進む中で、単にモノを運ぶだけでなく、一時保管や流通加工業務といった輸送に関連する附帯業務の提供を求められるようになってきた。
そのため、開業当初の同社のターミナル施設は保管機能を持たない平屋建ての荷扱場が中心だったが、徐々に1階部分が荷扱場で、2階より上部は貨物の一時保管や値札付け、セット組みといった流通加工業務の提供が可能な多層階式の「配送センター」への建替えが進められていった。
関谷氏は「こうした建替えは、物流ニーズの付加価値化といった事業環境の変化に対応したものだった。ただ当時は、あくまで当社のメイン業務であるトラックターミナル事業を補完する附帯的な事業という位置付けにとどまっていた」と振り返る。
そして現在。物流を取り巻く外部環境はさらに大きな変化を続けており、それに伴って同社の事業のあり方も大きく変貌しつつある。同社の尾澤克之専務は、大きな変革期を迎えた物流の課題について、とくに労働力不足とEコマース進展の2点を挙げる。労働力不足は、いま物流業界が直面する最大の課題だといえる。
尾澤克之専務
「日本は人口減少時代を迎え、いまや各業種や企業間で労働力を奪い合う時代に突入した。物流分野でもドライバーや配送センターで働く従業員が構造的に不足しつつあり、それが様々なコスト上昇を招いている。そうした中で、国交省は『物流生産性革命』を掲げ、より少ない労働力で効率的な物流システムを構築するための施策を進めており、そのひとつとして企業単独での効率化にとどまらない連携や共同化を促している」と説明する。
さらに、ネット通販などEコマース市場の拡大は、商流の変化だけにとどまらず、モノの運び方やサプライチェーンの構造すらも大きく変えようとしている。
「Eコマース需要の急速な伸びは、物流事業者にとって新たな需要であり、大きなビジネスチャンスである一方、当日配送や時間指定配送など消費者ニーズは年々厳しくなっており、スピード性やきめ細かいサービスレベルを実現することが大きな課題となっている。しかも、欧米に比べて日本のEコマース化率はまだまだ低く、女性の社会進出や高齢化社会の進展を考えると、Eコマース市場はさらに拡大するだろう。ただでさえ、労働力の確保が難しくなっている状況であり、とりわけ東京などの大消費市場ではサービスレベルを維持することが難しくなる時代がやってくるだろう」との見通しを述べる。
つまり、現在の物流業界は、労働力不足という構造的課題に直面する一方で、Eコマースに代表される高付加価値な物流の実現が求められるという厳しい状況を迎えている。この"二つの課題"を同時に克服し乗り越えるためには、これまで以上に生産性を高めた高次元のロジスティクス・システムの構築を通じて、新たな形のソリューションを提示することが不可欠になっている。