日本自動車ターミナルが描く大都市物流戦略
「メトロポリタン・ロジスティクス」とは?

Chapter2

日本自動車ターミナルが掲げる「メトロポリタン・ロジスティクス」。そのコンセプトは「東京23区内の4つのトラックターミナルで『大都市物流戦略』を実現」すること。これによって、首都圏物流にはどのような変化が起こるのだろうか。

「メトロポリタン・ロジスティクス」に不可欠な
物流拠点としての4つのアドバンテージ

「メトロポリタン・ロジスティクス」とは何か。

 日本自動車ターミナルの尾澤克之専務は、そのコンセプトについて「東京という大消費市場において、競争力の高い"大都市物流戦略"を実現するために、物流拠点として求められる要件を示したもの」と定義する。

 そして、その要件は4つのアドバンテージ(優位性)で構成されると説明する。

 4つのアドバンテージとは
「Lead Time Advantage リードタイム・アドバンテージ」
「Labor Advantage レイバー・アドバンテージ」
「Carrier Link Advantage キャリアリンク・アドバンテージ」
「Continuity Advantage コンティニュイティ・アドバンテージ」
だという。

「リードタイム・アドバンテージ」とは、アクセスに優れ、消費地に近く、高効率な事業展開を可能にするための優位性を指す。

「とくにEコマースの分野では、当日配送や1時間配送など、いかに配達時間を短縮できるかが勝負となる。そのためには、消費地に近く、かつアクセスに優れた場所に立地していることが条件になる」(尾澤氏)。

 また、スピード・ロジスティクスを実現するためには大型かつ高機能な物流施設であることも必須要件となる。

「Eコマースの配送センターは通常、幅広い品揃えを実現して欠品をなくすために、一般小売業の3倍の在庫スペースが必要だといわれている。また、生産性の高い庫内オペレーションを行うためには、マテハン機器を導入できる強い床耐荷重や高い天井高に加え、ワンフロアで作業を完結するために、トラックがフロアに直接乗り入れできるダブルランプウェイなど高機能なスペックが求められる」(同)

「レイバー・アドバンテージ」とは、労働力の確保に優れた立地優位性を指す。「最近の物流施設は、物流の小口化、多頻度化が進んだこともあり、ピッキングや流通加工のために多くの庫内従業員が必要となる。ただ、労働力を奪い合う時代を迎えており、ヒトが集まりやすい場所に立地していないと、事業の継続性に支障が出る事態も考えられる。とくにパート・アルバイトの中心となる主婦の方にとっては、通勤時間や駅から近いといったことが勤務の条件となる」(同)

 また、コンビニやレストラン、休憩室、女性従業員向けのパウダールームなど、施設で働く人々が気持ち良く働けるアメニティ設備が備わっていることも大事な要件のひとつだ。

「キャリアリンク・アドバンテージ」とは、陸・海・空の輸送機関(キャリア)との連携や接続、また共同輸配送を実現する上での優位性を意味する。

「単独企業だけの効率化は限界に近づいており、これまで以上に生産性の高い物流を実現していくためには、他社との連携や共同化が不可欠な時代を迎えている。また、モーダルシフトを進めるためには鉄道貨物駅などが近くにあること、輸出入貨物など国際物流に対応するためには港や空港に近い場所に立地していることが必要になる。さらに、ドライバー不足が進む中で、"足回り"の確保はより一層大事になってくる。その意味では、近くにトラック運送事業者がいることは大きな安心材料につながる」(同)

「コンティニュイティ・アドバンテージ」とは、災害に強く、24時間・365日稼働可能な物流施設であることを示す。

「東日本大震災でサプライチェーンが寸断された事例を見ても、ソフト・ハードの両面で災害に強い物流施設であることは絶対条件となる。とくに東京の場合、首都直下型地震が発生するリスクは避けられず、仮に発災した場合でも事業継続性が確保されていることが重要だ」(同)

 また、都市型の物流施設の場合、地域住民とのトラブルを起こすことなく24時間・365日稼働できる施設であることが、優位性を確保する意味でも大事な条件となるという。

「都内にある物流施設の場合、稼働後に周辺の宅地化が進み、騒音などで近隣とトラブルになったり、建替えを行う際に反対運動にあったという話を聞くことが少なくない。その点からも、消費地に近い場所に立地しながらも、周辺に住宅地がないということが物流拠点を選ぶ際の大きなポイントになる」(同)

日本自動車ターミナル
尾澤克之専務

 尾澤氏は、「こうした4つのアドバンテージを兼ね備えた物流施設が、大都市物流戦略を高い次元で実現しようとする場合、競争優位性を発揮するだろう」と総括する。

 このような「メトロポリタン・ロジスティクス」の概念を当てはめた場合、日本自動車ターミナルが保有し、管理・運営する4つのトラックターミナルは、いずれも大田区、板橋区、足立区、江戸川区という東京23区内に立地し、各ターミナルとも鉄道駅から徒歩数分という便利な場所にある。

 また、40社近いトラック運送事業者がテナントとして入居しており、トラック輸送との連携が容易なほか、トラックターミナルという特性上、主要幹線道路にも近接している。トラック以外の輸送機関との連携についても、港湾や空港、鉄道貨物駅へのアクセスは良好だ。

 さらに、72時間連続稼働する非常用自家発電設備が全ターミナルに備わっており、災害対応やBCPの面でも万全を期しているほか、4ターミナルとも物流施設しか建てられない流通業務団地内に立地しているため、周辺に住宅が少なく、24時間・365日稼働も問題なく行うことができる。

 そして、同社が「メトロポリタン・ロジスティクス」で提示した新たな概念をより具現化し、新しい時代の"トラックターミナル像"を示す象徴的なアイコンとなるのが、2018年7月に完成する高機能型物流施設「ダイナベース」だ。

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