ムダ1:営業会議
数字をつき合わせるだけの報告の場

セールスフォース・ドットコムでなくなった営業会議のムダ

・進捗状況の確認
・予算・実績の数字のつき合わせ
・上司からの励ましなど、意味の薄い叱咤激励

徹底した情報共有で、会議をゼロに

 管理職を含めすべての営業が集まった営業会議を毎週行っている、という企業は多い。営業部門がさらに細分化されている場合は、組織ごと、マネージャーなどの階層ごとといった形で、週に何度も営業会議を行っている企業もある。しかしそのほとんどは、各担当者が前週の実績や進捗状況、さらに今週の目標を発表して、上司がそれに対して一言を加えるというパターン。「この会議に意味があるのか」と疑問を持つ人も多いのではないだろうか。「前の会社でも、実際に行っているのは進捗状況などの報告にすぎませんでした」と寺本氏は打ち明ける。「“各営業がほかの営業から気づきを得ることが会議の目的”と言いながら、実際は本部長の機嫌を損なわないよう、会議を乗り切るためにどう尽力していたかが実態でした」。本部長が出席する営業会議の前日には、作戦会議まで開かれていたという。

 事情は鈴木氏も同様のようだ。「毎週1回、3~4時間かけて会議が開かれていたのですが、状況把握だけで大半の時間を費やし、それを受けて次の戦略を練るというより、各人の意思表明と上司からの励ましで終わっていました」。

 そんな状況だったからこそ、転職して営業会議がまったくないことに「ショックを受けた」と2人が口をそろえるのも無理はない。営業会議がない秘密は、セールスフォース・ドットコム自身も活用している営業支援システムSalesforceにある。各担当者が、顧客企業への訪問内容はもちろん、進捗状況や目標、想定取引金額なども記入しており、ほかの営業担当者やマネージャーだけでなく、他部署のメンバーも閲覧でき、常に情報を共有している状態にあるのだ。「マネージャーの立場からは、定量的な数値を集約して分析したダッシュボードもチェックしています」と寺本氏。訪問件数の少ない営業や、進捗が遅れている案件などに対しては、社内コミュニケーションツールのChatterを使って、即座に直接指示を出すなどフォローを怠らない。また、2人が管轄する内勤・外勤営業は、営業プロセスの中で連携が必要な部分も多いが、常に情報を共有しているため、「会議というほどではなく、お互いに要望を出し合う程度で、数分のミーティングで事足ります」と鈴木氏は話す。

 営業会議で行われているような予算・実績のつき合わせや進捗状況の確認を、Salesforceで共有しているため、各営業の生産性向上とともに、より戦略的な営業が可能となっているのだ。

※ダッシュボード:フェーズごとの商談や、担当者ごとの売上見込みなどの指標を瞬時にグラフやリストなどに視覚化し、状況把握が可能

Salesforceで変わるポイント
商談レビューで営業チームの進捗を把握

営業チーム内での達成予測商談や大型商談のランキングなどを見ることができる。また、商談の準備から受注完了までのフェーズごとの金額を表示することもでき、進捗状況の把握にも役立つ。

 


ムダ2:エクセルシート
作成に手間がかかるわりに効果は疑問

セールスフォース・ドットコムでなくなったエクセルシートのムダ

・導き出された数値への異なる理解
・作成・入力にかかる手間と時間
・次の戦略に結びつかないただの数字

リアルタイムの状況把握・分析は可能か

 前項の営業会議と並んで、ほとんどの企業で必須のツールとなっているのがエクセルシート。新規開拓用の顧客一覧から、担当者ごと・顧客ごとの実績・予算管理、進捗状況の管理など、さまざまなファイルを作成してメンバー間で共有している企業は多い。状況を可視化するのには役立っていそうだが、その作成や入力の手間を考えると、営業活動全体にどこまで貢献しているかは疑問が残る。「前職では、ほぼ毎日のように使っていた」と語る寺本氏は、「エクセルシートは誰でも作ることができて便利な反面、作る人の観点によってまったく違うものになってしまうことが一番の問題」と指摘する。例えば来月の売上予測などで、結果の数値が同じでも、それが導き出されたプロセスは異なる。その部分が、エクセルシートでは覆い隠されてしまうというのだ。

 ならば、マスターファイルを作って全員がそこに入力すればよいと考えがちだが、そこにも落とし穴がある。「各メンバーが入力しても履歴が残らないので、数字が大きく変化したときなどは、前後関係がわからず、以前の会社では大変な思いをしました」と鈴木氏は語る。

 マスターファイルには、もっと大きなリスクもある。鈴木氏の前職でのこと、「とある社員に見込顧客一覧のエクセルシートを渡し、電話でアポ取りをさせたのですが、途中で誤って全データを消去してしまいました。幸い1週間前にバックアップをとってありましたが、すでにアポを取っていた客先の情報、詳細なヒアリング内容までわからなくなり、大きな機会損失を出してしまいました」。

 ともにエクセルシートに関して苦い思い出を持つ2人だが、セールスフォース・ドットコムに転職してからは、ほとんど使うことがなくなったという。その理由は、やはりSalesforceにある。各営業メンバーが自分の案件情報を入力していくことで、全体の数値や状況が自動的にリアルタイムに表示されるためだ。さらに、マネージャーがそれぞれ独自の指標に基づいてレポートやダッシュボードで分析を行うこともできる。なお、ともにマネージャーながら、外勤営業、内勤営業と異なる部署を受け持つ寺本氏と鈴木氏では、基となるデータは同じでも、見ているレポート、ダッシュボードはまったく異なるという。「“表計算ソフト”の名前の通り、エクセルは計算のためのものであり、管理には不向き」と鈴木氏。データをより戦略的に活用するという側面で、Salesforceが大きな役割を担っている。

※レポート:担当別や取引先別の売上などのデータを一覧で抽出・集計して分析することができる

Salesforceで変わるポイント
Salesforceで顧客に関するすべての情報はSalesforceの中に

Salesforce では基となる顧客情報も、履歴とともに全メンバーで共有されており、過去の営業活動履歴といった時系列のデータ、担当者ごと・案件ごとといった横串のデータもすぐに見ることができる。