「昔の話だ」と他人事に感じている人もいるかもしれません。確かに、ここで挙げた例は過去の話ですが、こうした主役交代を引き起こす劇的なイノベーションはこれから先、ますます頻発するようになるのです。

 そうした流れは、当事者であれば本来わかるはずのことです。それに気がついたら、素直に危機意識を持って、一刻も早く見切ってください。遅れを取ってしまうと、それだけ危機は回避できにくくなるものです。早めに移れば得られた次の活躍の場も、大量解雇段階に入れば奪い合いです。

 その見切りを30代半ばに行うことができれば、そこから数年かけて学び直しをする時間がまだあります。そうすれば、人生を変えられるはずです。

 そうした劇的なイノベーションが、国家レベルで起こったのがかつてのオランダやデンマークです。「フレキシキュリティ」(柔軟性[フレキシビリティ]と保証[セキュリティ]の造語。雇用の保証を労働市場の柔軟性によって達成しようとする考え方)と呼ばれる政策が取られ、国が主導した一大産業構造転換が行われました。生産性の低い産業を廃業にして、そこにいた人材と資金を成長性の高い産業に移し替えました。

 例えば法定最下限の時給を極めて高く(2000円超え)設定し、生産性の低い企業は物理的に人を雇えないようにするなどという荒業も使いました。労働市場に柔軟性を持たせて従業員を解雇しやすいようにして、その代わりに失業保険を手厚くしたのです。現在は少し下がったようですが、かつては失業する直前の給与の7掛けで支給期間無制限でした。

 ただし、その失業保険を受けるためには、国家資格を持ったキャリアカウンセラーの指導を受けるとともに、新たな仕事を得るための職業訓練プログラムを受講することが条件でした。しかも、そこで一定以上の成績を取らないと失業保険が打ち切られるという厳しさなのですが、その代わり、大学も大学院も無料なのです。

 もちろん、そうは言っても労働者はたまったものではありません。会社が潰れ、自分のスペシャリティが否定されてしまうのですから…。

染め物工場のエンジニアが
転職した業界は?

 そんな折にリストラされた、ある染め物工場のエンジニアの方を取材する機会がありました。彼はキャリアカウンセラーと話をして、「もう染め物業界は飽和していて、自分の居場所はない」と結論づけました。そこでこれから伸びる産業はどこかと考え、太陽光発電だと決めたのです。

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リストラされた染め物工場のエンジニアはどう行動したか?


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このコーナーでは、下記のメールアドレスにて、野田稔さん宛の質問を募集します。キャリアに関する悩み、記事内容に関する質問などに関して、適宜取り上げ、誌上でお答えします。誌上カウンセリングですので、直接のやり取りはありません。またお名前や具体的な社名などは公表しませんし、個人や企業が特定されるような記述は極力避けるよう配慮しますが、どうしても記載してほしくないことは、万が一を避けるために、メール文面にご記入されないようにお願いします。

なお、匿名での質問でも構いません。どの質問を取り上げるか取り上げないか、また単独の扱いか、同種の質問を同時に扱うか、いつ扱うかはすべてお任せいただきます。そのため、扱わない場合もありますし、すぐにお答えするかどうかはわかりません。その点はご容赦ください。

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