30代で変わらなければ
もう変われない
30代になってから口にするようになった言葉があります。以来年を取るにつれ、頻繁に口にするようになりました。それは、「もう師走。1年は速いですね」という言葉です。
振り返ってみれば、10代の頃にはそうした感覚とは無縁でした。20代の時も、こうした言葉を口にしたことはなかったと思います。
年を取るにつれて、確かに時の流れが速く感じるようになります。これは多くの人が感じることでしょう。理由は3つ思い当たります。
1つは心のあり方に起因する一種の錯覚です。年々忙しくなり、立ち止まってふと我に帰る時間が減れば、相対的に時の流れが速く感じるようになるものでしょう。
もう1つは、これは私の勝手な仮説なのですが、加齢に伴う代謝低下に起因するものです。人は年を取るにつれて代謝が低下します。代謝が落ちれば、単位時間当たりの肉体的および精神的な活動はきっと低下するでしょう。それはつまり、1年間でできることが減るということを意味します。
だから、時間の流れが速く感じられて、焦るのではないでしょうか。
本川達雄さんの『ゾウの時間 ネズミの時間~サイズの生物学』(中公新書、1992年)という本があります。一生のうちに心臓が打つ回数や体重当たりの総エネルギー使用量はサイズによらずほぼ一定なので、体が小さく表面積当たりの体積が小さいネズミは、体の大きなゾウに比べて単位体積当たりのエネルギー消費量が大きくならざるを得ず、そのため代謝が激しく心臓の拍動も早くなる。そうすると一生の時間が短くなる(短時間で規定の拍数を打ち切ってしまう)という考え方です。