私は企業の経営革新を支援する仕事をしているが、企業の様子を見ていると、心から情けなくなることがある。

 ビジョンを示せない経営者、危機感のない管理職、モラール(士気)の低下した社員……。そのままにしておけば、会社がつぶれるのも時間の問題だ。そこに気づいていながら、具体的な策を打ち出せない経営者のなんて多いのだろう。

「社長、もう思い切ってつぶした方がいい」なんて指摘することもあるくらいだ。

 日本企業は今さまざまな問題を抱えている。景気は低迷を続け、震災や円高などの逆風が日本を襲っている。確かに大変な時期だが、外部環境のせいにしてしまうのは残念ながら甘えだ。

 現在の状況が悪いなら、それを打破するために、考えうるあらゆる対策に徹底的に取り組んだだろうか? 改革に全力を注いだだろうか?

 会社の元気を取り戻すのに必要なのは、美辞麗句だけを並べただけの内容がスカスカの経営計画書ではない。今までの仕事のムダをごっそり省き、圧倒的な効率化を図り、大きな改革を成し遂げる、そのための具体的な工程表だ。

またそれは、上から押しつけられてやるようなものではなく、経営者から担当社員に至るまで全員が前向きになり、熱くなって活動できるようなものでなくてはならないのだ。

成果主義やフラット型組織は失敗する

 日本企業が抱える問題についていくつか考えてみよう。たとえば成果主義の失敗もその一つ。

 多くの企業が何らかのかたちで成果主義を導入している。その一方で現場では、社員が目先の成果だけを求めて利己的行動に走ったり、ハードルの高い目標ではなく達成しやすい目標を設定したり、何か問題があっても評価につながらないよう隠したりするなど、制度のひずみが生じている例も多い。適正な目標を設定することが難しいことや、管理者による評価にばらつきがあること、評価と育成の連動がとれていないなどの問題があるからだ。

 社員が個々の利益に走ってしまっては、組織全体として大きな成果を上げることはできない。また、適正な人事評価ができなければ、同じ職種でありながら「賃金の格差が拡大した」「ゴマすりのうまいヤツが得をする」という不満が職場に広がることになる。