娘との心温まる
「こぼれ話」が添えられている

 最後のページを閉じたとき、私の口から「あ~、面白かった」と思わず言葉がこぼれた。それほど面白く感じたのは、本書が、今日性を多く含んでいたからだと思う。父親になった時には、『私は赤ちゃん』を読んだ。面白かったが、そんな言葉は出なかった。その時感じたのは、赤ちゃん視点という新しさと普遍性、そして社会現象を生んだ「当時の今日性」だったのかもしれない。

 では、本書の面白さはどこからきているのか。それは編集の妙だと思う。生後1ヵ月から4歳までの48ヵ月の本編と、脳科学の視点をまとめた12のコラムで構成されている。イラストもかわいい。そして、48の記事にはそれぞれ、娘さんとの心温まる「こぼれ話」が添えられていて、思わず口元がゆるんでしまう。まるで、SNSで同僚と交流するような気持ちで読み進められ、しかも「脳科学の知識」が身につくようになっているのだ。

 ここまで読んで、皆さまは本書のどこに興味をもたれただろうか。子どもの変化を脳科学で分析して発見や感動を生み出す「本編」だろうか、「こぼれ話」だろうか、コラムなどに散りばめられている「脳科学の知識」だろうか。この三つを、ひとつずつご紹介したい。

 まずは「本編」の発見と感動の事例から。それまで娘さんは、絵を描いた紙の裏側をパパに向けて見せていたそうだが、あるとき、紙の表側を見せてくれるようになった。これを著者は、大きな進歩と受け取って、感動したそうなのである。なぜか。

“ものが見えるのは、ものに当たった光がその物体の表面で跳ね返って、瞳に入ってくるからです。しかし、その光路を遮る別の物体があれば見えません。娘が絵を私のほうに向けたのは、そうした光の物理的な特性に適切に対処していることの表れ。加えて、そこには「自分からの見えと相手からの見えは異なる」という認識もあります。つまり脳の中で、他者からの視点を想定しているのです。これも「メンタルローテーション」の応用です。 ~本書より抜粋”

 一般人パパの私にも、きっとこの幸せな瞬間があったに違いない。でも、完全に見過ごしてしまった。あ~、もったいない。著者が、感動することができたのは、脳科学の知見があったからだ。実に、うらやましい。俗に「這えば立て、立てば歩めの親心」というが、脳科学者のパパは、このステップが他の人よりも多いのだ。つまりそれは、幸せを感じとる機会が、たくさんあるということなのである。

 このように、脳科学者パパならではの発見と感動が、本書にはたくさん詰まっている。誤解を恐れずに言えば、本書は子育てというエンターテイメントが100倍面白くなる本だと思う。楽しむことは、上達の第一歩。これから育児を始める方には、きっと大きな武器になる本だ。

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生後3歳までに脳の中で起きる意外な真実

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