人間は、脳あってこその存在。人の行動、思考、感情、性格にみられる違いの数々は、すべて脳が決めているのです。「心の個性」それはすなわち「脳の個性」。私たちが日常何気なく行なっていることはもちろん、「なぜだろう?」と思っている行動の中にも「脳」が大きく絡んでいることがあります。「脳」を知ることは、あなたの中にある「なぜ?」を知ることにもなるのです。この連載では、脳のトリビアともいえる意外な脳の姿を紹介していきます。
発想力のベースは
「知識」と「記憶」
確かに人間は脳でものを考えます。何かを発想しようとするときにも、脳で発想しているのは間違いありません。ですから、脳の調子が悪ければ、発想も陳腐なものになってしまう、少なくとも、発想に行きづまったとき、そんな気がしてきますよね。
それならば、脳の科学によって発想力を飛躍的に高めることができるはず――そう考える人もいるのではないでしょうか。
しかし、現実はそうは甘くはありません。
現在の最高水準の脳科学をもってしても、脳の鍛え方で卓越した発想力を獲得することはできません。そもそも、脳と発想力との相関関係すら、はっきりとはわかっていないのです。
そもそも、発想力はそれだけで独立しているわけではありません。ベースになっているのは知識であり記憶です。知識が豊富で、それが蓄積されていなければ、発想のスタートにすら立てません。
そう考えれば、脳内で必要なのは、まず有用な「知識」を蓄積し、それらを「記憶」しておくことだといえます。そして、この記憶こそ、言うまでもなく脳そのものなのです。
斬新な
発想の条件とは?
脳の神経細胞は毎日大量に死滅し、記憶と深い関係をもつシナプスも年を経るごとに減少していきます。
それ自体は異常ではないし、むしろ必要な過程ですらあります。というのも、新しい知識や経験を吸収するためには、常に不要な細胞やシナプスを削除しなければならないからです。