生後3歳までに脳の中で
起きる意外な真実とは…
子育てがエンターテイメントなら、心温まるエピソードほど、楽しいものはない。私は48個の「こぼれ話」をすべて読んだ。これを読むのを楽しみにして、読み進めたといっても良いかもしれない。読むテンポが生まれ、著者に親近感が湧いた。たくさん紹介したいのだが、ここではひとつだけ紹介したい。
“娘と一緒に遊びはじめた「世界の国旗かるた1・2」(学研)。国旗が95種類あるのですが、娘はあっという間に覚えてしまい、私は1回しか勝ったことがない。これが年齢差の現実でしょうか(汗)。 ~本書より抜粋”
読みやすくて楽しい本なのでご紹介が後回しになったが、本書のベースは、脳科学の用語や知見である。印象深いものがいくつも紹介されていて、すぐに育児で使えそうな知識もある。なかでも、最も私の印象に残ったのは、著者が「三つ子の魂百まで」という言葉にふれた時に紹介した生後3歳までに脳の中で起きる意外な真実である。
“脳の神経細胞の数は「おぎゃー」と誕生した瞬間が一番多くて、あとは減っていきます。そして3歳になるまでに約70%の神経細胞を排除します。生き残る神経細胞は30%。その後、その30%は変化しません。健康ならば100歳を超えても、この30%を保持し続けます。つまり3歳までに残った神経細胞を一生使うのです。 ~本書より抜粋”
赤ちゃんはどんな世界に生まれてくるか分からない。そのため、生まれおちた環境に順応すべく多くの神経細胞をもって生まれ、3歳までの間に無用なものを捨てると考えられているそうなのだ。これを知って、私は「しまった」と思った。二人のわが子は、既に私と同じ程度にまで減ってしまっているのだ。それと同時に、こんなことも思った。
私は5歳まで長崎で暮らした。それから東京に転居し「しばらくしたら、長崎に帰る」といわれながら、ついぞ帰ることはなかった。先日、ノーベル文学賞受賞者を紹介するニュースを観ていたら、同じようなことを言っていた。もしかすると、私の頭に残った神経細胞は、カズオ・イシグロさんに近いものなのかもしれない。そして、長崎の記憶は、美しきものとして定着している。…ん?ちょっと違う?
確かなのは、脳の中身に思いを巡らすことが、楽しいということである。
(HONZ 吉村博光)




