国会議事堂国民には、森友や加計、桜を見る会の問題で、公文書に対する疑心暗鬼が生じている(写真はイメ―ジです) Photo:PIXTA

「公文書は民主主義に不可欠だが、
政府にはその認識がない」

 昨年、石橋湛山記念早稲田ジャーナリズム大賞を受賞した、毎日新聞の好評連載「公文書クライシス」。本書はその取材班が、取材の手の内を明かしながら、ふたたび公文書の闇を照らし出したレポートである。記者たちは今なお取材を続けており、その追及は凄みを増している。記事を読んだ方にも、間違いなく一読の価値がある本といえる。

『公文書危機』書影『公文書危機』 毎日新聞取材班  毎日新聞出版刊 1500円+税

 またもう一つ、本書『公文書危機』の大きな読みどころとなっているのが官邸と記者との生々しいやりとりだ。さすが、記者の手でまとめられた文章だけあって、構成と筆致が素晴らしい。森友や加計、桜を見る会の問題で、公文書に対する疑心暗鬼が生じている私たちにとって、今まさに読んでおくべき一冊だ。いきなり結論めいて恐縮だが、その現状について本書にはこう書いてある。

“公文書管理法は第1条で「公文書は健全な民主主義の根幹を支える国民共有の知的資源として、主権者である国民が主体的に利用しうるもの」と定めている。つまり、公文書は民主主義制度にとって欠かせないもので、国民のためにあるということだ。しかし、政府で働く人々にこうした意識があるようにはみえない。  ~本書「あとがき」より”

 つまり「公文書は民主主義に不可欠だが、政府にはその認識がない」と断言しているのだ。私があえて結論から始めたのは、深くて広いこの問題の根を丹念に探っていくことこそ、本書の肝だと思ったからである。本稿では、取材班が最も鋭く追及している「公文書ガイドライン(2017年12月改定)の実態」を中心に取り上げたい。